2017 Fiscal Year Research-status Report
波浪中を動揺しながら旋回運動する船の運動履歴影響に関する研究
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17K14891
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Research Institution | National Institute of Maritime, Port and Aviation Technology |
Principal Investigator |
鈴木 良介 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, その他部局等, 研究員 (20711328)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 波浪中操縦運動 / 6自由度船体運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、波浪中旋回時の6自由度船体運動推定に対する、船体運動による流体反力の周波数依存性の準定常仮定の影響について調査をした。操縦運動を含む波浪中の船体運動推定計算には、実施者らが過去の研究課題で開発した微小振幅規則波中での操縦運動を対象とする6自由度船体運動計算プログラムを用いた。新たに実施したコンテナ模型とタンカー模型を用いた規則波中操縦運動模型実験との比較および、流体反力の代表周波数の取り扱いを種々に変化させた数値計算による考察から明らかとなった主要な点を以下に示す。 流体反力の慣性力及び減衰力の前後・左右・回頭方向成分を出会い波周波数0の値で代表し、その他の方向は出会い波周波数の時々刻々の変化の影響を準定常的に考慮した計算では、規則波中の旋回時の横運動(左右・横・船首揺れ)は推定誤差を無視できない。船体動揺が大きい波条件や船形であるほどこの誤差は大きくなる傾向にある。船体運動を操舵に伴う低周波成分と波による高周波成分に分離して、前者の流体反力は出会い波周波数0の値で代表し、後者の流体反力にはその変化を準定常的に考慮することで改善が見られる。この船体運動自体を周波数分離する必要があることは、操縦運動時の横運動の推定における流体反力の準定常仮定の適用限界と言える。 これまでの研究では、その簡易性から波浪中旋回時の6自由度船体運動計算では、流体反力をある周波数で代表する、あるいは準定常的に扱うものがほとんどであったが、その問題点を実験との比較から具体的に示された例はほとんどない。そのため、本年度得られた成果は意義があると言える。 本年度指摘した流体反力の周波数依存性を理論的に考慮する方法については、平成30年度に実施予定の流体反力の運動履歴影響関数(メモリー影響関数)を適用した波浪中の操縦運動計算で詳細に行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定の研究実施計画に沿って成果を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
船体運動による流体反力の運動履歴影響を適切に考慮可能な実用的メモリー影響関数の構築を試みる。初期段階として、一定船速・進路、非粘性を仮定した従来の抵抗性能分野で検証されている線形理論計算におけるインパルス応答関数の畳込積分を利用する。このメモリー影響関数による操縦運動時の船体動揺の推定精度改善について、初年度に得た模型実験結果との比較から検証する。さらに、操縦運動に影響が大きいと考えられる流体反力における減衰力の粘性成分や非線形運動方程式に対する実用的なメモリー影響関数の取り扱いを検討する。
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Causes of Carryover |
残金が少額で有効に利用できる物品の購入ができなかったため、次年度使用額に充てた。 これと翌年度分を合わせた助成金の使用予定は次の通りである。 計算機(30~40万円)、学会参加費(1万円)、旅費(5~10万円)、人件費(計算データ入力まとめ補助)(30万円)、計算消耗品(10万円)。
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