2017 Fiscal Year Research-status Report
Study of development process of vacancy-type defects in rare-gas-plasma-induced metal-nanostructure formation process
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17K14896
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
薮内 敦 京都大学, 原子炉実験所, 助教 (90551367)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 陽電子消滅分光法 / 陽電子寿命 / 原子空孔 / 格子欠陥 / 核融合 / プラズマ・壁相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属中の原子空孔の振る舞いを調べるためには格子欠陥を除去した出発試料を用意する必要がある。本研究で対象とする高融点金属中の格子欠陥を除去するためには2000℃超でのアニールが求められる。一般的な電気管状炉ではそのような温度でのアニールには対応できないため、平成29年度には電子衝撃加熱方式による高温アニール装置を作製した。真空チャンバー内にタングステンメッシュフィラメントと試料を設置し、試料側に最大6 kVの高電圧を印加できる構造とした。フィラメントから放出される熱電子を試料に照射することで試料温度2000℃~2300℃でのアニールを可能にした。 上記の高温アニール装置を用いて高融点金属試料をアニールし格子欠陥を除去した。アニール後に陽電子寿命測定を行ったところ、各試料とも過去の文献で報告されている完全結晶での陽電子寿命値とほぼ等しい寿命値が得られ、格子欠陥の除去が上手く行われていることが確認できた。 次に高融点金属中での原子空孔同士の相互作用について調べるため、アニールした試料に8 MeV電子線照射を行い原子空孔を導入した。近年、第一原理計算を用いた研究よりタングステン中での原子空孔同士の結合エネルギーは負である(原子空孔同士が反発する)と報告されている。しかし高純度(99.999%)タングステン試料に電子線照射で導入した原子空孔の回復過程を陽電子寿命測定により観察したところ、理論研究で言われている予測とは異なり熱処理により原子空孔が集合していることを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに整備した電子衝撃加熱方式アニール装置は作業性の面で多少改善の余地を残しているが試料アニール自体は問題なく実施可能となり、本研究の遂行で重要となる出発試料の作製方法は確立できた。また、電子線照射による原子空孔導入も行い、平成30年度以降に行う希ガス原子と原子空孔との相互作用に関する研究のベースとなる、原子空孔回復挙動のデータも得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
タングステン中での原子空孔同士の相互作用については、これまでのところ理論予測とは異なり空孔同士が結合・集合することを示唆する結果が得られている。電子線の照射条件等を変えた試料を作製しさらに検証を重ねる予定である。また、希ガス原子と原子空孔との相互作用の評価に関しては、最初にタングステンに着目しヘリウム・ネオン・アルゴンでの違いを観察、次にヘリウムに着目しタングステン・タンタル・モリブデン・ニオブでの違いを観察していくことで、希ガスプラズマ誘起繊維状ナノ構造の形成能と空孔集合体の形成能との相関を明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
電子衝撃加熱方式アニール装置が当初予算よりも低額で整備できたため未使用額が生じた。次年度は、より小さな試料のアニールを可能にする装置改良を行い、未使用額はその経費に充当することとしたい。
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Research Products
(12 results)