2017 Fiscal Year Research-status Report
バイオリアクターを活用したトリチウム除去システムの高度化に関する研究
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17K14905
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
枝尾 祐希 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 ブランケット研究開発部, 主任研究員(任常) (70633858)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トリチウム / 水素 / 土壌 / 水素酸化細菌 / 核融合 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
トリチウム取り扱い施設のトリチウム除去システムでは、トリチウムガスを酸化するトリチウム酸化触媒塔に貴金属触媒を用いるが、室温、高水蒸気濃度、低水素濃度の条件ではその機能を失う。従来の貴金属触媒法の欠点を補う新たな手法として、土壌中の水素酸化細菌の水素酸化機能に着目した。本研究では、工学的アプローチにより水素酸化細菌のトリチウム酸化特性を応用したトリチウム酸化反応器(バイオリアクター)の開発を目的とし、バイオリアクターを活用することにより既存トリチウム酸化触媒塔の欠点を補完したトリチウム除去システムの高度化を目指している。 本研究では、実験により土壌水素酸化細菌のトリチウム酸化特性を把握し、酸化特性を発揮するための最適条件の精査し、高活性の土壌水素酸化細菌を固定化してバイオリアクターを構築し、反応器としての実用性を評価することを計画している。 H29年度は、土壌水素酸化細菌のトリチウム酸化特性の把握に注力した。ガス流通式の実験装置を新規に製作し、近隣から容易に入手可能な水素酸化細菌を有する各種土壌のトリチウム酸化特性を調べた。各土壌は、いずれも同程度のトリチウム酸化性能を有することを確認した。代表的な土壌についてトリチウム酸化活性に影響すると考えられる水素濃度、酸素濃度、水分濃度等の条件を変えてトリチウム酸化性能に関する実験データを取得した。トリチウム酸化性能は空気中の水素濃度と同じ濃度において最も高く、水素濃度が高くなるに従い低下し、高濃度水素では一定化する傾向が確認できた。本実験により通常の貴金属触媒塔は真逆の特性を示すことを明らかにした。室温、低濃度水素、高湿度という通常の触媒が適さない条件で効率的な酸化を行える水素酸化細菌は触媒を補完する特性を持つことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験により土壌水素酸化細菌のトリチウム酸化特性を把握し、酸化特性を発揮するための最適条件を精査し、予定通りにトリチウム酸化に関する基礎データを蓄積した。現在、高活性を持つ土壌から水素酸化細菌(酵素)をバイオキャリア(微生物担体など)へ固定化する方法を調査している。バイオキャリアを入手し、土壌暴露による水素酸化細菌の固定化、簡易な微生物培養法を試している。予定していた土壌中の水素酸化細菌の同定分析作業が未実施であるが、現在実験と並行して進めており、研究の進捗への影響はない。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度に引き続き、高活性を持つ土壌から水素酸化細菌(酵素)をバイオキャリア(微生物担体など)へ固定化する方法を調査する。高活性を持った土壌及び水素酸化酵素を固定化したバイオキャリアに対して流量、温度等の条件を変えた実験を継続して行い、トリチウム酸化効率に対する温度、流量、水素濃度依存性を測定する。土壌におけるトリチウムの酸化反応において、反応の素過程(境膜内拡散、表面反応等)を想定し、土壌水素酸化細菌によるトリチウム酸化の反応機構を明らかにすることを予定している。蓄積した実験データを基にトリチウム酸化反応速度を評価し、バイオリアクターとしての実用性を検討する。
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Causes of Carryover |
計画当初、トリチウム酸化性能に起因する土壌中細菌の分析のために、専門の分析設備と技術を有する業者に依頼し、土壌酸化細菌の詳細データを取得する予定であった。しかしながら、分析業者との打合せの結果、土壌中の特定の細菌の分析のためには技術的なハードルが高く、分析に多くの時間を要することが判明した。実験結果により分析対象とする土壌を選定した後に依頼分析をかけたため、年度内に分析結果が得られないことが分かった。したがって、分析作業はH30年度に実施することとし、分析のための費用を繰り越すこととした。繰り越した予算は、土壌中細菌の分析作業のために使用する予定である。
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Research Products
(1 results)