2018 Fiscal Year Research-status Report
5価のウランと遷移金属の混合酸化物生成メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K14908
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
秋山 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80746751)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 5価ウラン化合物 / 遷移金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウラン化合物に含まれるウランの価数は4価、6価が最も一般的である。本研究では生成がほとんど確認されていない5価のウラン化合物に着目し、その生成メカニズムを解明することを目的としている。H30年度はウラン酸化物と遷移金属であるニッケル、コバルト、銅を混合し、加熱処理を行いウラン化合物(CuU3O10, CuUO4, CoUO4, CoU2O6, NiU2O6等)の合成を行った。これらの試料を放射光施設のKEK-PFにてU-LIII吸収端のXAFS測定を行った。CuU3O10及びCuUO4はCuOとU3O8をそれぞれモル比1:1、3:1で混合し、870℃大気雰囲気で4時間加熱処理した。XRD測定の結果、それぞれの試料について高純度の化合物が合成できたことを確認した。XAFS測定の結果、UはUO3のXAFSスペクトルと近似していることから、いずれも6価である可能性が示唆された。CoUO4はCoOとU3O8をモル比3:1で混合し、1000℃大気雰囲気で8時間加熱処理して合成した。これらの試料もXRD測定の結果、高純度で合成できたことを確認した。CoU2O6は、Co3O4、U3O8、UO2をモル比1:1:3で混合し、900℃、Ar雰囲気で4時間加熱処理を行い、合成した。XRD測定の結果、高純度の化合物が合成できたことを確認した。CoUO4、CoU2O6もUO3のスペクトルと近似しており、6価であると推察された。NiU2O6はNiO, UO2, UO3をモル比1:1:1で混合した後、石英ガラスに真空封入し、900℃で4時間加熱処理を行って合成した。XRD測定の結果、U3O8等の不純物が多く検出されたことから、1M硝酸溶液に浸漬し、U3O8のみ溶解させることで高純度の化合物を合成した。しかし、XAFS測定の結果、スペクトルがきれいに取れなかったためH31年度に再測定を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたウラン化合物より多くの試料(CuU3O10, CuUO4, CoUO4, CoU2O6, NiU2O6等)を合成し、放射光施設のKEK-PFにてXAFS測定を行うことができた。それぞれ合成する試料について、文献調査及び合成法の検討を行うとともに、加熱処理後にXRD分析を行うことでその純度を確認し、ウラン化合物を合成することができた。得られたXAFSスペクトルの結果を解析し、本年度合成したCuU3O10, CuUO4, CoUO4, CoU2O6に含まれるUはいずれも6価であることが示唆された。これまで5価のウラン化合物として確認されている、FeUO4とCrUO4と比較することで、ウランが5価になる条件について考察を行うことができる。また、5価のウラン化合物として知られるNiU2O6については、XRD分析から合成は行うことができたが、XAFS測定の結果、解析に必要なスペクトルを得ることができず、再測定を行う必要がある。このことから、研究はおおむね計画通りに進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
H30年度はウラン-銅系、ウラン-コバルト系、ウラン-ニッケル系のウラン化合物の合成及び分析を行った。今後は一部の化合物の純度をより高くし、再測定を行う予定である。また、比較としてウランを用いない非放射性の比較試料としてBiVO4等を合成し、XAFS測定を行う予定である。H31年度はこれらの結果をまとめ、非放射性の試料と5価のウラン化合物の比較と、5価ウラン化合物と6価ウラン化合物の比較を行うことで、どのような条件でウランが5価を取りうるか考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初購入予定であった消耗品が既存のもので代用できたことや、交換が必要になると考えられていた実験器具が1年間使用することができたため、予定よりも支出を抑えることができた。翌年度は物品費の他に一部人件費に充て、実験補助者を雇い実験量を増やすことと、成果をまとめた論文発表で使用する予定である。
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