2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14912
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
鈴木 正昭 東京理科大学, 理工学部経営工学科, 助教 (10431842)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原子力 / 過酷事故 / 事故対応 / アクシデントマネジメント / 人工知能 / 機械学習 / リスク / レジリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
原子力発電所の過酷事故時に、プラントの機能喪失状態とその時点で活用可能な設備・要員の情報から、それ以降の最適なアクシデントマネジメント手順をリアルタイムで提示できる人工知能システムを開発することを目的として、平成29年度は主に理論面の研究に焦点を当て、機械学習用データベースを整備するとともに人工知能システムの基本モデルを構築した。 「(1)機械学習用最適アクシデントマネジメントデータベースの構築」:人工知能システムの教師データとするため、プラントの安全上重要な機能とそれらの状態(健全/機能喪失、機能喪失からの経過時間など)、活用可能な設備・要員とそれらの状態(使用可否、性能など)、およびそのような局面で実行されるアクシデントマネジメント手順を収集して整理した。 「(2)確定的なプラント状態に対する最適アクシデントマネジメント手順の導出手法の開発」:機械学習手法により上記(1)で整備したアクシデントマネジメントデータベースを学習し、確定的なプラント状態に対して最適アクシデントマネジメント手順を導出する人工知能システムの基本モデルを構築した。 さらに、リスクとレジリエンスの観点から合理的な過酷事故対応を明らかにするために、研究代表者が提案している過酷事故に対するプラントのレジリエンス性の評価指標の適用性を評価した。 また、上記の成果の一部を、国内の学会や海外の国際会議、論文誌にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「(1) 機械学習用最適アクシデントマネジメントデータベースの構築」:人工知能システムの教師データとするため、電力事業者による重大事故等対策の有効性評価データなどを参考に、プラントの安全上重要な機能とそれらの状態、活用可能な設備・要員とそれらの状態、およびそのような局面で実行されるアクシデントマネジメント手順を収集して整理した。また、データ高品質化・データ拡張の観点から、数理計画法による教師データの算出についても検討を行った。 「(2)確定的なプラント状態に対する最適アクシデントマネジメント手順の導出手法の開発」:機械学習手法により上記(1)で整備したデータベースを学習し、確定的なプラント状態に対して最適アクシデントマネジメント手順を導出する人工知能システムの基本モデルを構築した。一つ一つの意思決定がその後の大きなリスクの顕在化に強く寄与する過酷事故対応にあっては科学的根拠に基づく合理的な判断を下す必要があることから、なぜそのような結果が出力されるのか、といった結果の意味解釈・可読性の観点から機械学習手法の検討を行った。 リスクとレジリエンスの観点から合理的な過酷事故対応を明らかにするために、過酷事故に対するプラントのレジリエンス性の評価指標の適用性を評価した。炉型の特性の反映や使用実績の限られる新型炉における知見の抽出の観点から、軽水炉と高速炉に対してレジリエンス試評価を実施・比較することで評価指標の改善点などを明らかにした。 また、上記の成果の一部を、国内の学会や海外の国際会議、論文誌にて発表して関連研究者と議論することができ、平成30年度以降の研究課題・論点が明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は平成29年度に構築した人工知能システムをより現実的な問題へと拡張し、さらに、高速化することで実用性を向上させる。 「(3)確率論的に推定されるプラント状態に対する最適アクシデントマネジメント手順の導出手法の開発」:平成29年度に「(2)確定的なプラント状態に対する最適アクシデントマネジメント手順の導出手法の開発」で構築した人工知能システムを拡張して、モニタリング情報の不完全性・不確実性を考慮した最適アクシデントマネジメント手順を導出することを可能にする。不完全・不確実情報から情報エントロピーに基づき確率論的にプラント状態を推定し、人工知能への入力に用いる。ここで得られる最適アクシデントマネジメント手順と上記(2)で得られた最適アクシデントマネジメント手順とを比較することで、最適なアクシデントマネジメント手順の選択のために重要となるモニタリング情報、状態確認順序、計測器配置などを明らかにする。 「(4)確率論的に推定されるプラント状態に対する最適アクシデントマネジメント手順のリアルタイム導出手法の開発」:上記(3)で構築した人工知能システムを高速化して、過酷事故時に実用的な時間内にリアルタイムで最適アクシデントマネジメント手順を導出することを可能にする。大型計算機上で大規模並列化による高速計算手法を開発するとともに、実運用時の計算環境・資源を考慮して最適な計算精度-計算コストのバランスを明らかにする。
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Causes of Carryover |
多量のデータを人工知能に学習させるために大規模並列学習計算環境を構築する予定であったが、現有データに対しては比較的小規模な計算環境による学習が可能であったため、未使用額が生じた。 しかし、次年度以降、データ高品質化・データ拡張等によるデータ拡充に伴い大規模並列学習計算環境の構築が必要と見込まれるため、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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