2018 Fiscal Year Research-status Report
化学結合評価に基づくランタノイド抽出パターンの解明
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17K14915
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
金子 政志 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (50781697)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ランタノイドパターン / fブロック錯体 / 密度汎関数法 / メスバウアー分光 / 化学結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度のfブロック金属イオンの化学結合研究の新たな展開として、ニクトゲン元素との化学結合評価や、fブロック金属イオンの分離研究において実績のあるジアミド型配位子を用いた構造及び化学反応のモデリングに取り組んだ。 まず、マイナーアクチノイドであるアメリシウムとランタノイドであるユウロピウムの化学結合特性を比較するために、窒素・リン・ヒ素・アンチモンなどのニクトゲン元素をドナー元素として有する配位子に着目した。メチレンジアミン骨格の窒素を置換した配位子と金属イオンが1 : 1で錯生成した錯体をモデル化し、錯生成による安定化エネルギーを見積もった結果、ユウロピウム・アメリシウムともに窒素 > リン > ヒ素 > アンチモンの順に安定化が大きくなり、ユウロピウムに対するアメリシウムの選択性は、ン配位子が三価アメリシウムの分離に適していることが示唆された。この選択性の傾向は、ピアソンによるHSAB則によるソフト酸分類の傾向と一致し、アメリシウム中のf軌道電子のニクトゲン元素との化学結合への寄与の大きさと相関づけられることを示唆した。 続いて、ランタノイド及びマイナーアクチノイドに対して分離実績のある二つのジアミド型配位子、ジグリコールアミド(DGA)とアルキルジアミドアミン(ADAAM)を用いて、三価ネオジム・ユウロピウムの分離及びアメリシウム・キュリウムの分離に着目した。これまでに報告されている錯生成反応メカニズムを参照して金属錯体をモデル化し、化学結合評価を行った結果、ネオジム・ユウロピウムは、f軌道電子のDGA及びADAAMとの化学結合への寄与はどちらも小さく、選択性がほとんど発現しないことが示唆された。アメリシウム・キュリウムについては、DGA配位子とADAAMとでf軌道電子の寄与が異なり、ADAAMがアメリシウムに対して選択性を有することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アクチノイドを含めたfブロック元素における化学結合の評価手法を、ニクトゲン配位子やジアミド型配位子を用いて基礎・応用的な視点から検討した。その成果についても、国際会議や査読付き論文として出版することができた。また、ネオジム/ユウロピウム及びアメリシウム/キュリウムという類似した化学的性質を持つ金属イオン間の違いを議論できるようになり、研究全体としては順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、2018年度までに検討を修了した計算・解析手法を用いて、これまでに報告されているいくつかの抽出剤によるランタノイド抽出パターンのモデル化に着手する。方策としては、水和数の変化及び陰イオンの配位を考慮したモデルを組み込んだうえで、ランタノイドの錯生成反応の傾向を議論し、実際の抽出パターンとの関連付けについて検討する。
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Causes of Carryover |
物品購入の際に当初の計画よりも安価に調達できたため。次年度助成金と合わせ、消耗品費および旅費として使用する。
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