2017 Fiscal Year Research-status Report
液液界面で起こる溶媒抽出機構の解明とそれに基づいた核分裂生成物の分離法の開発
Project/Area Number |
17K14919
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
日下 良二 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究職 (30733125)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 溶媒抽出 / 界面 / 表面 / 和周波発生分光 / 金属錯体 / ランタノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
金属イオンの溶媒抽出に使用される一般的な抽出剤は界面活性で、溶媒抽出の際に有機相と水相の界面に集まり、有機相/抽出剤単分子膜/水相界面を形成し、界面で金属イオンと錯形成することで、金属イオンを有機相へ抽出すると考えられている。本年度は、有機相/抽出剤単分子膜/水相界面のモデルとして、水表面に形成する抽出剤単分子膜/水界面を利用し、この界面に捕捉された金属イオンの様子を捉えることに成功した。実験は、一般的な溶媒抽出の代表例として、抽出剤にジ-2-エチルヘキシルリン酸(HDEHP)、金属イオンにユウロピウムイオン(Eu3+)を選び、それらを溶かした水溶液の表面に形成したHDEHP/水溶液界面に対し、CHおよびOH伸縮振動領域(2800-3500 cm-1)におけるヘテロダイン検出振動和周波発生分光測定を行った。その結果、Eu3+は、有機相や水相では見られない、HDEHPと水分子に挟まれた特異的な構造の金属錯体を形成して界面で存在していることが分かった。抽出剤単分子膜/水界面で捉えた金属イオンの状態は、有機相へ抽出される直前の金属イオンの状態と考えることができる。従って、今回の結果を踏まえると、HDEHPによるEu3+の溶媒抽出機構として、有機相と水相の界面でHDEHPと水分子に挟まれた構造の金属錯体を形成した後に、有機相へEu3+が抽出される溶媒抽出機構を提案することができる。本研究によって、溶媒抽出と密接に関連していると考えられる金属錯体を界面で観測することに成功した。このことは、界面に存在する金属錯体の情報を、溶媒抽出法の性能を向上させるための情報として利用できる可能性を示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ランタノイドと抽出剤の金属錯体を界面で捉え、その構造を決めることができた。これによって、界面の金属錯体の情報に基づいて溶媒抽出の性能を向上させるという、今後の研究を展開できる段階に到達できた。従って、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な溶媒抽出系に対し実験を行い、界面の金属錯体の性質を明らかにする。また、どのような構造の金属錯体を界面で形成した時に、溶媒抽出の性能が良くなるかを見極め、溶媒抽出の性能を向上させるための手掛かりとする。
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Causes of Carryover |
国際会議における発表を取りやめたため。この分は次年度に国際会議で成果発表するために使用する。
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Research Products
(4 results)