2017 Fiscal Year Research-status Report
結晶化度・欠陥制御されたリン酸塩系正極材料の高速充放電反応メカニズム解明
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17K14920
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
木須 一彰 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (80755645)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リチウムイオン二次電池 / リン酸鉄リチウム / リン酸鉄コバルトリチウム / 結晶化度・欠陥 |
Outline of Annual Research Achievements |
高いエネルギー密度と高いパワー密度を併せ持つ次世代蓄電デバイス構築に向けて、電極材料の技術革新が求められている。本研究では、リン酸系正極材料に着目し、欠陥および結晶化度が電気化学特性に与える影響を明らかにすることで、電極材料の充放電速度向上およびサイクル寿命向上への新たな指針を得ることを目的としている。平成29年度では、特に鉄やコバルトをベースにしたリン酸系正極材料を対象に、結晶内欠陥の賦与および結晶化度の制御を行い、その電気化学特性を評価することで電極反応機構解明を目指した。以下に詳細を報告する。 リン酸鉄リチウムの結晶化度制御と評価:リン酸鉄リチウムを中空構造カーボン内に内包担持させた複合体材料を作製し、内包されたリン酸鉄リチウムの結晶化度の制御を行った。過去の研究では、内包させたリン酸鉄リチウムが”結晶相”と"アモルファス相”の2相がコアシェル状の構造を有した複合体となっていた。複合体作製における乾燥条件および焼成条件の検討により、単相のアモルファス相を中空構造カーボン内に生成させることに成功した。本複合体を用いたリチウムイオン電池の充放電特性評価の結果、これまでに作製したコアシェル構造と同等もしくはそれ以上の高速充放電が可能であると示唆された。現在は、高速充放電可能なアモルファスリン酸鉄リチウムの充放電機構の解明およびマグネシウムやカルシウムなどの多価イオン電池への展開を目指している。 リン酸鉄コバルトリチウムへの欠陥賦与:リン酸鉄コバルトリチウムは高い反応電位から高エネルギー密度化が期待できる一方、充放電サイクルに伴う容量劣化が課題である。平成29年度では、リン酸鉄コバルトリチウムに対し、結晶内への欠陥賦与およびアモルファス化を試みることで、一定の容量劣化抑制に成功した。現在は、欠陥および結晶化度の制御を行うことで、さらなる容量劣化抑制を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度においては、複合体材料作製時の乾燥条件および焼成条件の検討により、リン酸鉄リチウムの結晶化度制御が可能となった。結晶化度制御された複合体の電気化学評価により、結晶化度と電気化学特性の関係性についての知見が得られた。また、多価イオン電池や高電圧系正極材料リン酸鉄コバルトリチウムなどへの展開も始めている。本研究は当初計画のお通り、おおむね順調に進展しているものと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究計画は、平成29年度で可能となった結晶化度制御および高温焼成を経たリン酸鉄リチウムを用いてポストリチウムイオン二次電池や新規電極材料への展開を行う。 [多価イオン電池への展開]電池材料内におけるゲストカチオンの拡散が、カチオンのサイズおよび価数に大きく依存することは自明であり、充放電反応メカニズムに対しても大きな影響を及ぼす。ゲストカチオンとしてリチウムだけではなく、マグネシウムおよびカルシウムの適用を行うことで、意図的に反応メカニズムに変化を与え、ホスト材料の結晶化度・欠陥とゲストカチオンのサイズ・価数における相互作用の解明を目指す。 [高電圧正極材料への展開]リン酸鉄リチウムと同じオリビン系結晶構造を持つLiMnPO4やLiCoPO4及びそれらの固溶体は高い反応電位を有している一方で、LiFePO4よりも更に低いリチウムイオン拡散係数や充放電サイクル寿命が課題となっている。欠陥および結晶化度制御を用いることで、拡散係数を飛躍的に向上およびサイクル寿命を向上させ、蓄電デバイスの高電圧化・高エネルギー密度化を目指す。
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Causes of Carryover |
電池材料や焼成炉などについて、当初の予定より低価格で購入が可能となったため、必要とする費用が当初計画よりも少ない結果となった。
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