2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K14934
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
竹内 勇一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (40508884)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 左右性 / 脳の機能分化 / 表現型多型 / 捕食行動 / シクリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
左右性の獲得機構に関して大きな進展があり、Scientific Reportsで発表した。 右利き・左利きといった行動の左右性は、魚類からほ乳類まで、様々な動物に広く見られる現象であるが、発達上の獲得過程はよく分かっていない。今回、繁殖で得た鱗食魚を用いて、捕食行動の左右性の獲得過程を実験的に検証した。まず、ふ化して固形飼料のみで個別飼育した鱗食未経験の幼魚(4ヶ月齢、21匹)と餌魚(キンギョ)を1匹ずつ水槽に入れて、1時間行動を観察した。観察した全個体は、獲物に対して両方向から襲った。同じ個体を用いて、数日おきに捕食実験を計5回行ったところ、襲撃方向は徐々に口部形態と対応した方向に偏り、野外研究を支持する結果が得られた。また実験を繰り返すと捕食成功率は高くなっていた。次に、鱗食未経験の成魚(9ヶ月齢、6匹)で捕食実験を行い、先ほどの幼魚の5回目と襲撃方向の偏りを比較したところ、幼魚5回目の方が有意に偏りが強く、同様に、同齢の幼魚で5回目の実験日に1回目の実験を行った2群(6匹ずつ)を比較しても、5回目の群の方が偏りが強かった。驚いたことに、襲撃時に見られる胴の屈曲運動(屈曲変化量、最大角速度)は1回目の捕食実験から、口部形態と対応した方向で高い能力が発揮された。以上より、鱗食魚には生得的に捕食に有利な方向があり、鱗食経験からの学習を通じてランダムであった襲撃方向が有利方向へと統一され、効率的に鱗食できるようになると考えられる。 また、魚類60目の口部形態における左右差に関して、Zoological Scienceで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
利きの発達に関する学術論文を発表できた(Sci. Rep. 2017)。 また、利きと脳の左右差に関する脳内遺伝子の解析(RNA-seq, qPCR)が始まり、利きに関わらず右脳で発現量の多い遺伝子、左脳で発現量の多い遺伝子を見出すに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
脳内遺伝子の解析については、研究成果を論文にまとめる。 鱗食魚の捕食行動の左右差を駆動すると考えられる脳領域の解剖学的左右差を解析するために、脳を透明化して該当箇所を3次元構築し、厳密に評価する予定である。
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