2017 Fiscal Year Research-status Report
情動ストレス負荷に対する自律神経応答の脳神経回路メカニズム解明
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17K14936
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山下 哲 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (40740197)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ストレス / オレキシン / 視床下部 / ファイバーフォトメトリー / 自律神経応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物はストレスを受けた際、循環・呼吸・体温変化などストレス防衛反応と呼ばれる反応を引き起こす。これに関わる神経系としては多くの可能性が過去の研究により示唆されているが、中でもオレキシン神経はそのマスタースイッチとして機能している可能性が提唱されている。しかしながら、オレキシン神経がストレスに暴露された際にどのようなタイミング・頻度で活動しているのか、リアルタイム解析した研究は未だない。そこでこれを達成するために、自由行動マウスの脳深部から遺伝学的に特定した神経のみの活動を記録する手法を開発し、オレキシン神経活動と循環応答の同時計測を試みた。 オレキシン神経特異的に高感度カルシウム感受性タンパク(G-CaMP6)を発現したマウスを遺伝子改変マウスとアデノ随伴ウイルスベクターを用いて作製した。そのマウスの視床下部領域直上に光ファイバーを留置し、このファイバーで青色励起光の送達とG-CaMP6由来の蛍光の検出を試みた。同マウスの腹腔内に無線タイプの心電・深部体温測定装置を留置し、心拍・体温を測定することでこれを循環応答の指標とした。嫌悪ストレス負荷としては、侵入者同居ストレス、天敵由来のにおい負荷ストレス、超音波負荷ストレスの3種を用いた。 マウスが嫌悪感を受ける上記のストレス負荷を与えた際に、いずれの負荷時においても、即座にオレキシン神経活動由来のG-CaMP6蛍光の上昇が観察された。また、この変化はストレス負荷時による心拍上昇と相関し、さらには心拍上昇の直前にG-CaMP6蛍光が上昇していることが明らかとなった。本研究により、心拍・体温といった循環応答の指標となる生理信号と、脳深部の特定神経活動を自由に行動するマウスからリアルタイムに同時測定することが可能となった。これによりマウスが嫌悪ストレスを感じた際にオレキシン神経が即座に反応することがはじめて明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画書における初年度の計画では、「急性ストレス負荷時におけるオレキシン神経の活動様式とその役割を調べる」とし、そのために、ファイバーフォトメトリーを用いてストレス誘発循環応答とオレキシン神経活動とのリアルタイム同時計測を達成する予定であった。研究業績の概要にも記した通り、この目標は概ね達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、①オレキシン神経活動から自律応答(循環応答)に至るまでの経路を、ファイバーフォトメトリー手法を用いたオレキシン神経軸索からのカルシウム計測により明らかとし、②その経路を光遺伝学により操作し、循環応答との因果関係を明らかにすることである。まずはオレキシン神経軸索計測を成功させる予定であるが、同時進行で光操作系の実験準備も進める。
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