2017 Fiscal Year Research-status Report
行動の意欲をコントロールするドーパミン報酬系の神経回路ネットワークの解析
Project/Area Number |
17K14938
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
松本 英之 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (50511383)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ラット / 報酬 / 学習 / 意欲 / ドーパミン / 電気生理学 / 光遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、意欲の神経機構を明らかにすることである。本研究では、ラットの行動開始の意欲を動的に変化させる行動課題を用いて、行動開始意欲の生成と制御における神経網の情報処理を明らかにする。 初年度は行動課題の確立と、自由行動下での神経活動同時記録法の確立と解析を中心に行った。動物の行動開始の意欲を変化させるため、報酬を得られる確率が動的に変化する行動課題を考案した。ラットが試行を開始するまでの時間を計測すると、報酬獲得の確率が低い時間帯では試行開始までの時間が長くなり、報酬獲得の確率が高い時間帯では開始時間は短くなった。また、選択肢から予測される報酬確率を経時的にランダムに変化させると、動物は試行錯誤を通して報酬期待値の高い選択肢を選択する行動を示した。以上の結果は、動物は報酬環境の変化を試行錯誤によって学習し、行動開始意欲を適応的に変化させることを示唆する。次にシリコンプローブ多点電極を用いて、動物の腹側被蓋野から神経活動を記録した。セミオートマチックなクラスタリング法を用いて、多チャンネルから記録された電位変化からスパイクをソーティング・クラスタリングする手法を確立した。動物の意欲状態や行動課題の各イベントに対する神経活動を解析し、内部状態依存的な神経活動変化に関する予備的な結果を得た。また、光遺伝学的手法によるニューロン活動の操作を行うため、種々のウィルスを腹側被蓋野などに注入し、光感受性タンパク質がCre組み換え酵素依存的に細胞種特異的に発現していることを免疫組織学的に確かめた。 以上のように、次年度以降の研究を推進するための基礎を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は行動実験、神経活動記録法、神経活動操作法の確立を計画していたが、次年度の研究を推進するための基盤技術を確立し、予備的な結果も得ていることから、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の後半として、複数の脳領域から神経活動の同時記録を行い、学習過程や意欲状態の変化に対する神経網の活動について調べる計画である。また、電気生理学と光遺伝学を組み合わせて行動課題中の特定の細胞種の活動を同定する。
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Causes of Carryover |
今年度は当初の予定より研究が比較的順調に進んだため、条件検討等で消耗すると考えていた物品等の費用を僅かに抑えることができた。次年度はより進展した研究を計画しており、研究費が必要になる。研究費を有効に活用するため、次年度配分額と合わせて動物実験にかかる諸消耗品の購入などに使用する予定である。
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