2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K14945
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田尾 賢太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (10708481)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 電気生理学 / 意思決定 / 前帯状皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、前年度までに頭部固定マウスをもちいた報酬履歴にもとづく確率的逆転学習課題を確立済である。本年度は、GABA作動性細胞特異的にcreリコンビナーゼを発現する遺伝子改変マウス (GAD-creマウス) およびチャネルロドプシン (ChR2) を発現するアデノ随伴ウイルスをもちいて不確帯 (ZI) GABA作動性細胞を標識し、前述の課題を遂行中のマウスより電気生理記録を試みた。しかしながら、ZIの神経活動パターンは非常に密であり、解析により単一細胞活動を分離することは困難であることが判明した。したがって、まず同課題においてZIの上流領域である前帯状皮質 (ACC) の神経活動およびその寄与を検討することにした。 確率的逆転学習課題を遂行中のマウスACCよりシリコンプローブをもちいて急性的に電気生理記録したところ、サルの相同領域において報告されている結果と同様に、無報酬の蓄積を表現する細胞が確認された。このような情報表現は、(1) 選択結果のフィードバック直後のみならず、(2) 試行間の待機中や、(3) 次試行の開始直前まで幅広い時間窓にわたって観察された。この神経活動が意思決定におよぼす影響を検証するため、PV陽性抑制性神経細胞特異的にChR2を発現させ、上述の期間1~3それぞれのACC神経活動を抑制した。その結果、試行開始直前の神経活動を抑制した場合のみ、無報酬にともなう選択の切り替え (lose-shift) が阻害されることが判明した。以上の結果は、ACCの神経活動が行動の段階特異的に可塑的な意思決定を実現していることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ZIからの電気生理記録については、解析上の困難さから更なる条件検討が必要であることが判明した。しかしながら、代替案としてACCからの電気生理記録に着手したところ、確率的逆転学習課題に関連した神経活動パターンが確認された点、その活動は必ずしも観察された全時間窓において意思決定には関与せず、段階特異性があることが発見された点については、一定の進捗があったと考えている。 以上を総合的に勘案すると、着目している脳領域は当初の計画どおりではないものの、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ACCからの記録実験 今年度実施した電気生理記録では、PV-creマウスおよびChR2をもちいてPV陽性抑制性神経細胞の活動を同定済みである。このデータおよび発火波形パターンを活用して、ACCの興奮性およびPV陽性を含む抑制性神経細胞で確率的逆転学習課題に関連する情報表現に差異が見られる可能性を検証する。 2. ACC投射BLA神経細胞の抑制実験 ACCは偏桃体外側基底核 (BLA) から強い投射を受けており、この回路が負のイベントに関する予測誤差の演算に関与することが示唆されている。そこで、軸索を逆行性に標識可能なアデノ随伴ウイルスおよび抑制性光感受性タンパク質であるeArch3.0をもちいて同経路を特異的に標識・抑制することを試みる。さらに、同経路を抑制することでACCの情報表現が変化する可能性を慢性電気生理記録により検証する。
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Causes of Carryover |
本研究課題で使用しているシリコンプローブは海外からの調達に数ヶ月を要する消耗品であり、本年度後半に予定していた購入分が会計年度をまたぐ可能性があったため、該当分を次年度に繰り越すこととした。
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