2017 Fiscal Year Research-status Report
Physiological roles of Vangl2 in neural development.
Project/Area Number |
17K14949
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
飛田 耶馬人 山梨大学, 医学部, 技術職員 (50570264)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Vangl2 / 神経科学 / 平面内細胞極性 / PCP / 神経形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
<内容> Vangl2を含む平面内細胞極性の遺伝子群は個体発生や発達期の神経形成に強く関連しており、これらの変異・欠損により神経管閉鎖障害による重篤な脊椎形成不全を引き起こすことが知られている。一方、遺伝的要因から神経疾患が生じる過程の理解が十分進んでいるとは言い難く、本研究では遺伝子から脳高次機能までを網羅的に解析する実験系の構築を行った。 1.Vangl2との結合様式の解析:これまでにYeast two hybrid法によってスクリーニングされたVangl2と相互作用する候補分子の発現ベクターを構築し、結合様式の確認を行った。28の候補分子に対してそれぞれ2-3種類のノックダウンベクターを構築し、先に作成した発現ベクターを用いてノックダウン効率の判定を行った。 2.部位特異的Vangl2欠損マウスの作出:Vangl2の個体発生における影響を考慮し、Cre-loxPを用いた条件付き遺伝子欠損マウス系統の樹立を行った。既に樹立済みのVangl2 floxedマウスに、神経細胞特異的(Nestin-Cre)、前脳神経細胞特異的(CaMKII-Cre)および小脳顆粒細胞特異的(E3CreN)、また薬剤投与によりCreの発現時期を調節できる神経細胞特異的(Nestin-CreERT2)マウス系統との交配を開始した。一般的にVangl2ヘテロ欠損体ではしっぽがらせん状になるループテイルの表現型が知られているが、本研究から得られた欠損個体においても同様の表現型が観察された。 <重要性および意義>平面内細胞極性因子の神経形成への影響に関して、本研究のように欠損マウスを用いて遺伝的要因を形態学的に、また脳高次機能を行動学的に解析することは脳の基礎研究において重要である。また関連遺伝子を詳細に解析することでターゲット分子を特定し、疾患治療への応用という点においても社会的に意義のある研究である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、Yeast two hybrid法によりスクリーニングした60の候補分子に関してデータベースや文献などの情報を検索し、Vangl2との相互作用を解析する候補分子を28に絞り込んだ。次に、これら候補分子をGST融合タンパク質として大腸菌で発現させ、pull down法にて相互作用を調べたところ、26の候補分子においてVangl2との相互作用を再確認した。また候補分子における作用機序の解析に必要なノックダウンベクターの構築を行い、哺乳類細胞に発現ベクターおよびノックダウンベクターを共発現させ効率を判定した。その結果16候補において、発現を20-50%まで抑制するノックダウンベクターが得られた。一方、ノックダウン効率が低いベクターに対しては、引き続きベクターの再設計を行っている。 また部位特異的Vangl2欠損マウスについては、神経細胞特異的Vangl2欠損マウス(Nestin-Creとの交配系統)及び前脳特異的Vangl2欠損マウス(CaMKII-Creとの交配系統)を樹立し、脳のホモジネートサンプルを用いたウェスタンブロッティング法によってVangl2の減少を確認した。 以上の進行状況から、本研究計画はおおむね順調であると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はこれまでに得られている候補分子の発現ベクター、ノックダウンベクターおよびVangl2 floxedマウスを用いて、研究課題であるVangl2の神経形態形成に関わる分子機構について解析を進める。 具体的にはVangl2 floxedマウスから初代培養神経細胞を作成し、アデノ随伴ウィルスベクター(AAV)によりCreを発現させることでVangl2を欠損させる。ここにVangl2との相互作用が確認された候補分子の発現ベクターまたはノックダウンベクターを導入することで、表現型の回復の有無を指標に候補分子の樹状突起形成のシグナル経路における作用機序を検討する。表現型の解析は過去の論文を参考に樹状突起や棘の形成を形態学的に解析する(Yoshioka et al., 2013; Hagiwara et al., 2014)。 またVangl2の欠損が脳高次機能にどのような影響を及ぼすかを調べるために、作成した欠損マウスを用い以下の行動解析を実施予定である。記憶・学習に関する試験としては恐怖条件付け学習や報酬学習試験、運動量や不安行動に関する試験としてオープンフィールド試験や高架式十字迷路を実施予定である。得られた表現型により実験項目を追加・修正していく予定である。
|
Causes of Carryover |
研究計画申請書提出時には初年度予算(平成29年度)として試薬、キット、抗体、動物購入費および飼育費を主として計上していた。このうち、平成29年度は発現ベクターおよびノックダウンベクターの構築を中心に進めたため、動物を用いた解析については次年度への課題となった。このため抗体購入費用、動物購入費および飼育費の一部について平成30年度へと繰り越すこととした。 前年度繰越分および平成30年度請求額の使用計画について、前年度構築したベクター類およびVangl2欠損マウスの形態学、行動学解析を実施する予定である。前年度予算の繰越による増額分については、行動解析の種類を増やしVangl2欠損マウスの表現型についてより多方面から検討する用途として使用する予定である。
|