2018 Fiscal Year Research-status Report
GluK3含有カイニン酸受容体による不安行動制御の解明
Project/Area Number |
17K14960
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
飯田 和泉 (渡辺和泉) 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80751031)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | GluK3 / 不安 / 行動解析 / 培養神経細胞 / 細胞免疫染色 / ドーパミン |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はGluK3による不安制御がどこの領域でどのように行われているのか明らかにするため、予定していた解析のうち、GluK3を介した不安制御神経回路の解析を主に行った。
GluK3の発現量が抗不安行動に影響するのか、GluK3の発現量が減少しているGluK3ヘテロマウスを用いて調べた。その結果、オープンフィールドでは抗不安行動を示し、高架式十字迷路テストでは野生型とGluK3KOマウスの中間の表現型を示した。このことからGluK3による不安行動調節はGluK3の発現量に従うことが明らかとなった。またGluK3による不安行動調節にドーパミンが関係しているのか調べるために、ドーパミン受容体選択的な拮抗薬であるハロペリドールを投与したときの不安行動を解析しているところである。 研究室の異動に伴い、これまで検討してこなかった培養神経細胞の解析を始めた。まずはラット18日胚の脳から、GluK3の発現量が最も高い大脳皮質の神経細胞の培養を立ち上げた。この培養細胞をウェスタンブロットで解析したところ、GluK3の発現が確認できた。そこで神経細胞の膜表面におけるGluK3の発現量がドーパミンにより制御されるのかを検証した。しかしながらセロトニン受容体とドーパミン受容体の拮抗薬のリスペリドンで神経細胞を刺激しても膜表面のGluK3量に顕著な変化は見られなかった。 さらにこの培養神経細胞でのGluK3の局在を免疫染色で調べた。GluK3とプレシナプスマーカーのシナプトフィジン、そして興奮性のポストシナプスマーカーであるPSD95、または抑制性のポストシナプスマーカーのgephyrin、これらの三重染色でGluK3局在シナプスの特徴を調べたところ、GluK3は両方のシナプスで高密度に発現していることがわかった。その染色像は他のサブタイプのGluK2などとはかなり異なることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
行動解析では生理食塩水の投与により不安行動が増加してしまい、不安行動の変化に対する評価が遅れている。 また、新たに解析に組み込んだ培養神経細胞の解析から、GluK3が発現する神経細胞には多数の性質を示すものがあることが分かり、GluK3の関与する神経回路は広範に渡って制御されているために、この回路の特徴を見出すことに当初の予定より時間がかかっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
行動解析では生理食塩水やハロペリドールを用いた薬剤投与後の解析条件の検討がより必要であることがわかったため、薬剤投与後の行動解析をする時間を検討する。行動解析で異常が明らかとなった薬剤投与後のマウスの脳を採取し生化学解析を行いGluK3発現量の増減を確認する。 また培養神経細胞で内在性のGluK3の刺激による局在変化を免疫染色で見るには、神経細胞の種類によってGluK3の発現パターンが異なるため評価が難しいことが分かった。そこで蛍光標識したGluK3発現ベクターを作製し培養神経細胞に発現させ、薬剤刺激時のGluK3の局在変化を解析する。 これまでの解析ではどこの領域がGluK3による不安制御を中心的に行っているのかは明らかにできていない。野生型とGluK3KOマウスの脳切片を免疫染色し、主要な興奮及び抑制性の神経伝達に重要な分子の発現の差を脳全体で検討する。また、野生型とGluK3KOマウスの脳領域を切り分けて、それぞれ質量分析にかけ、発現に差がある分子群を網羅的に解析する。 さらにGluK3を介した不安制御神経回路の解析は、回路に関係する候補分子を絞る。そのために、GluK3が大脳皮質のシナプスに高発現していることが免疫染色で明らかとなったのでGluK3結合タンパク質を免疫沈降実験と質量分析法で調べる実験を追加し、シナプスにおける受容体や足場タンパクとの相互作用を改めて解析に組み込む。
|
Causes of Carryover |
申請者は2018年度から育児休暇後復帰し、研究継続期間が一年間あるため次年度使用額が生じた。
復帰とともに研究室を異動したため、当初の計画とは異なる神経細胞の培養や免疫染色による解析を行っている。このため次年度では、培養細胞の消耗品の購入や抗体の購入を計画している。また、次年度から計画に取り入れようとしている質量分析による解析に使用する予定である。
|