2017 Fiscal Year Research-status Report
マウス初期胚発生における多能性細胞の発生・分化機構の解明
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17K14976
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
浅見 拓哉 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 特任助教 (90793290)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 初期胚発生 / 多能性 / エピブラスト / 原始内胚葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、マウス初期胚発生におけるエピブラスト(EPI)と原始内胚葉(PrE)分化メカニズムを明らかにすることを目的としている。申請者らは、転写因子Klf5がマウスES細胞の未分化性維持に重要なコア転写因子であるNanog、Oct4、Sox2と同様に、初期胚発生に重要であることと、特にKlf5欠損(KO)マウス胚からES細胞が樹立できないことに着目し、EPIの発生に重要であると考えた。そこで、Klf5 KO胚の表現型を詳細に解析した結果、胚盤胞期のKlf5 KO胚ではNanog陽性のEPIが消失しており、内部細胞塊(ICM)の殆どの細胞はGata6陽性のPrEに分化していた。Klf5 KO胚を用いたマイクロアレイ解析および単一細胞qPCRを行い、Klf5の標的遺伝子の同定を試みた。その結果、Klf5 KO胚ではFGF4の発現がEPIとPrEが分化する前段階の後期桑実胚期において亢進していることがわかった。マウスES細胞において、Klf5はFgf4のプロモーターおよびエンハンサー領域に結合していたことから、Fgf4はKlf5の直接の標的遺伝子であることが示唆された。また、FGF-ERK経路の阻害剤を含む培地中でKlf5 KO胚を発生させた結果、Klf5 KO胚のICMにNanog陽性細胞が出現したことから、Klf5 KO胚におけるFgf4の発現の亢進がPrEへ分化を進めていたことが判明した。以上から、EPIとPrEの分化が開始する前段階のE3.25において、転写因子Klf5がFGF4の発現を抑制することによりEPIとPrEの分化バランスを保障していることを明らかにした(Azami et al., Development, 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
着床前胚のEPIで見られる最初に特異的な遺伝子発現はFGF4であるが、FGF4の初期の発現がどの様一部の細胞で開始するのかは不明のままだった。そこで、どの様な細胞でFGF4の発現が開始するのかを明らかにするため、FGF4タンパクの染色方法を確立した。その結果、E3.0の内部細胞塊の一部でFGF4の発現が観察された。さらに、FGF4を発現する細胞を発生の初期段階から経時的に観察するため、FGF4 H2B-GFPノックインマウスの作製を進めている。今後、作製したマウスを用いてライブイメージングを行うことで、FGF4陽性細胞の発生起源を明らかにする。また、FGF-ERK経路が活性化している細胞を同定するため、リン酸化ERKの染色方法を確立した。その結果、これまでの手法は着床前胚では再現性の低さが指摘されていたが、再現性高く、高感度にリン酸化ERKを染色方法を確立することに成功した。今後は、確立したFGF4とリン酸化ERKの染色を組合せて、引き続きEPIとPrEの分化において、FGF-ERK経路がどの様な制御を受けているのかに着目して研究を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
EPIとPrEの分化において、FGF4を発現する細胞とそれを受けてFGF-ERK経路が活性化する細胞を明らかにするために、確立したFGF4タンパクおよびリン酸化ERKの染色を同一の胚で行う。また、前年度より作製を進めているFgf4 H2B-GFPノックインマウスを用いてライブイメージングを行い、どの様にFgf4を発現する細胞が発生の過程で出現するのかを明らかにする。Fgf4を最初に発現する細胞を同定できた場合、GFP蛍光を元に単離し、単一細胞qPCRおよびRNA-seqを行い、Fgf4陰性の細胞と遺伝子発現の違いがあるかどうか解析する。これらの解析を通じ、EPIの起源であるFgf4陽性細胞が出現するメカニズムを明らかにすることを目指す。 一方、EPIが着床前後でどの様に分化するのかを明らかにする。既に作製したFgf5-Venusマウス(Khoa and Azami et al., 2016)を用いて、どの発生ステージから着床後EPIの指標であるFgf5の発現が開始するのかを明らかにする。さらに、着床前のFgf5-Venus胚をin vitroで着床後胚まで発生させる実験系を用いて、着床にともなう細胞形態の変化とFgf5-Venusの発現を観察し、着床後EPIの多能性状態(primed型)へ以降する様子を捉える。 これらの解析を通じて、マウス初期胚発生過程における多能性細胞の発生と分化メカニズムを明らかにすることを目指す。
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Research Products
(3 results)