2017 Fiscal Year Research-status Report
Uncovering the mechanisms of glycolytic activation in tumorigenesis using iPS derivation as a model system
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17K14993
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
曽根 正光 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (90599771)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 発がん / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
終末分化した体細胞が通常ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化経路によってエネルギーを産生するのとは異なり、がん細胞の多くは解糖系を主要なエネルギー産生経路とする。古くから、この解糖系依存的な代謝が、がん細胞の旺盛な増殖力を支える基盤であると考えられてきた。しかし、発がんにおいて、どのようにして解糖系代謝を活性化するのか、そのメカニズムは明らかではない。理由として、その過程をin vitro で再現できる優れたモデルが存在しなかったことが考えられる。本研究では、発がんと同様に、酸化的リン酸化から解糖系へエネルギー代謝がスイッチするiPS 細胞誘導をモデルとして、がん細胞が解糖系代謝を活性化するメカニズムを明らかにすることを目的としている。これまで、がん化およびiPS細胞誘導において、低酸素誘導因子(HIF)と呼ばれる転写因子が、解糖系の活性化を主導すると考えられてきた。しかしながら、HIFを活性化する突然変異のないがん細胞株でも解糖系は亢進しており、通常の酸素濃度下ではHIFタンパク質は恒常的に分解されていることから、HIFだけではがん細胞における解糖系の亢進は説明できないと考えられる。 そこで本研究では(1)HIF 欠損ヒト繊維芽細胞を用いたiPS 細胞誘導系において、HIF の欠損をバイパスしてリプログラミングすることのできる変異群を同定する。(2)そうした変異が解糖系およびその他の細胞内代謝に及ぼす影響をメタボローム解析などにより明らかにする。(3)in vitro およびin vivo 実験系で、(1)で同定した変異ががん化にどのような影響を持つのかを解明し、報告されている実際のがんで見られる変異との関連性を明らかにする。 当該年度において、薬剤によってHIFの欠損を導入することのできるiPS細胞誘導系の確立に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度には、まずMTA締結の元、米国Broad Instituteより、iPS細胞誘導性線維芽細胞株hiF-T細胞(Cacchiarelli et al., 2015, Cell)を分与いただいた。本細胞株は、Doxycyclineを添加すると、山中4因子(OCT4, SOX2, KLF4, MYC)を強制発現することが可能であり、それにより高効率に線維芽細胞をiPS細胞へとリプログラミングすることが可能である。実際、申請者ら研究室でもそれが再現された。また、本細胞株はテロメラーゼ(hTERT)を過剰発現することにより不死化されており、理論上無限の増殖能を持つとされている。本研究計画では、こうしたhiF-T細胞の利点を活かし、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子組み替え技術により、HIFの欠損をタモキシフェン依存的に導入することのできる新規の線維芽細胞株を樹立する予定であった。しかしながら、実際にそうした遺伝子改変を試みると、hiF-T細胞は低密度での培養条件では急速に細胞老化を起こして増殖能力を失ってしまい、安定的な遺伝子改変株をクローニングすることが不可能であった。低密度状態を回避するためにフィーダー細胞の存在下でのクローニングや、Doxycyclineを加えリプログラミング因子を発現させた状態でのクローニングなど様々なアプローチを検討したが、いずれも不首尾であった。
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Strategy for Future Research Activity |
hiF-T細胞はヒト初代線維芽細胞にDoxycycline誘導性の山中因子発現カセットを安定的に導入したのちリプログラミングし、一次iPS細胞を作製した上で、それを再度線維芽細胞へと分化させることで樹立された(Cacchiarelli et al., 2015, Cell)。今後、我々の手で、同じ手法を用いて一次iPS細胞を作製し、それにHIFの欠損などの遺伝子改変を加える予定である。iPS細胞などの多能性幹細胞についてはCRISPR/Cas9を用いた遺伝子改変やクローニングが多数報告されており、上記の問題を解決できると考えられる。その後、線維芽細胞株を樹立し、当初予定していたスクリーニングを行なっていく予定である。
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