2017 Fiscal Year Research-status Report
悪性腫瘍細胞におけるTrop-2の発現誘導、リン酸化機構及び生物学的意義の解析
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17K14998
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
森 勇伍 京都産業大学, 総合生命科学部, 講師 (00780785)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌 / 細胞移動・転移 / 細胞間接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
Trop-2はその発現量と予後の相関関係が報告されている癌悪性化因子であるが、悪性化抑制因子として機能していることを示唆する報告もされている。本研究では同分子の質的変化(リン酸化)に注目し、リン酸化に伴う癌悪性化機構への関与について主に以下の解析を行った。A) Trop-2のリン酸化を担うキナーゼの同定。B) 細胞移動能及び転移能の測定による、Trop-2のリン酸化に伴う細胞機能への関与。C) Trop-2のリン酸化に伴うclaudin-7との相互作用への影響。 下記にそれぞれの実績を記載する。 A) Trop-2細胞質内領域のセリン残基のリン酸化が重要であることを示す予備的データが得られているため、種々のセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤によるTrop-2のリン酸化への影響を解析した結果、同分子のリン酸化はPKC阻害剤によって著しく抑制された。更に、種々のPKC阻害剤及び遺伝子サイレンシング(siRNA)により、複数のPKCを同時に抑制することで、リン酸化が顕著に抑制されることが明らかとなった。 B) Trop-2のリン酸化に伴う細胞移動能の亢進が、in vitro解析(transwell assay)により示され、加えて同移動能がPKC阻害剤により抑制されることを示した。また、Trop-2のリン酸化に伴う臓器(肺及び肝臓)への転移亢進が、in vivo解析(異種移植)により明らかとなった。 C) 合成ペプチドを用いて、Trop-2のリン酸化有無によるclaudin-7細胞質内領域との相互作用の変化を検討した結果、Trop-2のリン酸化の有無に関わらず、いずれのclaudin-7細胞質内領域(3か所)も、Trop-2との結合に関与していない可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A)及びB)に関しては、当初の予定通り順調に進展させることが出来ている。C)に関しては、当初想定していた機構とは異なる機構による制御の可能性が解析結果により示唆されたため、現在別途細胞株の樹立や解析等を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究実績に記載の内容を更に発展させる。具体的には下記の研究を計画する。 組み換え体Trop-2を調製し、カラムを作製することにより、癌微小環境下においてTrop-2のリン酸化を誘導する生理的なリガンドを探索する。また、in vitroでの細胞移動能亢進におけるPKCサイレンシング効果、in vivoでの転移亢進におけるPKC阻害剤の効果を検討する。更に、Trop-2の質的変化及びその影響のみではなく、Trop-2の発現誘導に関与する因子の同定及び機構を解析し、癌の悪性化に伴うTrop-2の発現亢進から質的変化に至る一連の機構の解析を目指す。
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