2017 Fiscal Year Research-status Report
高深度キノーム解析による淡明腎細胞癌分子標的薬感受性マーカーの同定と耐性克服
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17K15014
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
阿部 雄一 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 プロテオームリサーチプロジェクト, 特任研究員 (30731632)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 淡明型腎細胞がん / リン酸化プロテオーム / 分子標的 / 薬剤感受性 / キノーム |
Outline of Annual Research Achievements |
腎細胞癌の70%を占める淡明腎細胞癌への分子標的薬として承認されていたマルチキナーゼ標的薬、スニチニブ・アキシチニブには肝機能障害など重篤な副作用を引き起こす事が知られていた。しかしマルチキナーゼ標的薬への薬効診断・耐性克服標的は未だ十分でなく、さらなる研究が必要とされていた。 本研究計画では、申請者が構築した世界最高深度チロシンリン酸化プロテオーム解析を基盤として淡明腎細胞癌における網羅的キナーゼ情報(=キノーム情報)を取得し、マルチキナーゼ標的薬に対する感受性マーカーと耐性克服標的の同定を目的とする。 まず、淡明腎細胞癌の切除組織片から、コンディショナルリプログラミング(Conditional Reprogramming: CR)法による癌組織由来細胞株の樹立を行う。CR法では人工多能性幹細胞培養条件下で初代培養を行う事で、高効率に患者癌部からの細胞株樹立を可能としている。CR法で得られた癌組織由来細胞株は元の患者における薬剤感受性を引き継いでおり、CR法細胞株によって肺がんにおける新規耐性克服標的の発見が報告されている事からも、本研究計画に適した実験材料であると言える。 これまでに淡明型腎細胞がん手術検体より21株のCR細胞株を樹立したため、2017年度までに計画に十分な細胞株が得られた。また活性化キノームプロファイルに必要なデータ処理に関する研究を2017年度中に完了させた。これらの実績を踏まえて、2018年度はCR細胞株リン酸化プロテオームと、そのキノームプロファイルを進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年には、リン酸化プロテオーム解析・チロシンリン酸化プロテオーム解析を組み合わせた、活性化キノームプロファイルに関する研究を完了させ、Scientific Reports誌に発表した。この結果、本研究計画に必用なデータ処理に関する基盤が構築された。 淡明腎細胞癌に対する分子標的薬であるスニチニブ、アキシチニブ、エベロリムス、カボザンチニブをCR法細胞株に対して処理し、細胞増殖阻害効果を増殖アッセイにて検証する。現在までに、増殖アッセイの結果から算出したIC50に基づいて細胞株を薬剤感受性群と耐性群との分類が完了している。現在、リン酸化プロテオーム用サンプルの前処理を進めており、計画通りの進展といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立したCR法細胞株を可溶化し、タンパク発現プロテオーム用、リン酸化プロテオーム用、チロシンリン酸化プロテオーム用の前処理をそれぞれ行う。各種プロテオーム解析を遂行する。得られたプロテオームデータを統合し、薬剤感受性群、耐性群それぞれにおけるキノーム変動を取得する。またリン酸化修飾の変動情報を利用して活性化キノームプロファイルを行う。キナーゼ活性・リン酸化修飾の情報から、耐性群で活性化しているリン酸化シグナルネットワークを暴き出す。
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Causes of Carryover |
リン酸化プロテオーム解析の前処理が2018年度に変更になったため、その分の金額を2018年度に移行させた
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Research Products
(3 results)