2018 Fiscal Year Research-status Report
化学療法、放射線治療、温熱療法を一つにまとめた膵臓癌治療用ナノ粒子の開発
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17K15016
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
斎藤 高 筑波大学, 附属病院, 医員 (70750107)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 温熱療法 / 放射線治療 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、がん治療抵抗性を示す膵臓癌への治療を目指し、放射線療法、化学療法、温熱療法の特性を併せ持つナノ粒子を開発し、薬剤の動態、腫瘍への集積性及び安全性を評価する。H30年度は、抗がん剤および磁性体を封入した膵臓癌治療用ナノ粒子の開発を実施した。数十nmの粒径を有する酸化鉄ナノ粒子に、温度応答性ポリマー(N-イソプロピルアクリルアミド:PNIPAAm)をコーティングすることで、温度応答性ナノ粒子を作成した。研究代表者等は、既に抗癌剤であるドキソルビシンと磁性体ナノ粒子及びPNIPAAmを組み合わせたスマートな温熱応答性ナノファイバーを完成させ、それにより癌細胞に対して効率良くアポトーシスを誘導することを明らかにしている。本研究では、所定温度で刺激応答性を有するように調整したPNIPAAm内部に、膵臓癌の治療に用いられている抗癌剤、ゲムシタビンを封入した。物性評価として、ゼータ電位測定および動的光散乱法による粒径測定の結果から、作成した磁性ナノ粒子が多層構造を有していることおよび6層程度で粒径が飽和することを明らかにした。また、交流磁場の印加による粒子内磁性体の発熱挙動について、EASYHEAT (Ambrell Corporation)を用いて調べた結果、印加時間の増加に伴いナノ粒子の温度が25℃から45℃まで上昇した。45℃まで到達するのに要した時間はおよそ4 minだった。次いで、作成したナノ粒子の抗がん剤担持能力を調べた結果、2層の状態で既に約70%の抗がん剤を担持していることが分かったが、その一方で、4層から8層まで多層化しても担持能力の大きな変化が見られなかった。このことから、内部にしっかりと封入できておらず、粒子の周りに保持されているだけの可能性が高く、今後の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ナノ粒子構造の決定および毒性評価のための細胞の準備にやや手間取っており、研究のさらなる加速が必要であると考えている。粒子構造に関しては、平成30年度までで、抗がん剤と磁性体を封入したナノ粒子の構造決定については、概ね見通しが立ったため、令和1年度は、細胞を用いた毒性評価と担癌マウスモデルを用いた抗腫瘍効果の検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
実施が遅れている細胞および担癌マウスを用いた毒性および抗腫瘍効果の評価について、筑波大学放射線腫瘍科に所属する松本孔貴助教にご指導いただき、加速度的に研究を実施する予定である。松本助教はキャリア当初から細胞および担癌マウスに対する放射線、抗がん剤および温熱の効果を調べる研究に従事しており、この分野におけるプロフェッショナルの一人であり、研究推進に寄与いただけると考える。
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