2017 Fiscal Year Research-status Report
GSK3βが制御するがん特異的エネルギー獲得機構の解明とがん治療への応用
Project/Area Number |
17K15022
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
堂本 貴寛 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80635540)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オートファジー / がん代謝 / 分子標的治療 / リン酸化 / GSK3β |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,がん細胞で異常な発現と活性を示すGSK(glycogen synthase kinase)3βのがん促進作用を発見し,その阻害による治療効果を複数のがん種で実証してきた.そのメカニズムとして,GSK3βが固有の分子経路により増殖や浸潤を誘導するとともに,がん特有の代謝制御を司っていることを見出した.がんはこうした奇異な代謝特性とともにオートファジーによりエネルギーを効率的に獲得し,悪性形質を発現・維持している.本研究では,大腸がん細胞のオートファジー経路におけるGSK3βの機能を系統的に解析することにより,がんの新たな代謝病態を明らかにし, GSK3βを標的とする治療法開発の分子基盤を強化する. 本年度は大腸がん細胞(SW480, HCT116, LoVo)と非腫瘍性細胞(HEK293)を用いてGSK3β阻害によるオートファジーへの影響を細胞レベルで解析した. まず, 大腸がん細胞と非腫瘍性細胞との間で, LC3-IIの量を指標に通常培養の定常状態でオートファジーレベルを比較した結果, 大腸がん細胞では非腫瘍細胞に比べLC3-IIが増加しており, エネルギー獲得がオートファジー依存的な状態であることが示唆された. また, 大腸がん細胞におけるオートファジー可視化モデルを用いてGSK3β阻害剤処理によるオートファジー活性への影響を解析したところ, オートファゴソーム形成より前の段階で, GSK3βがオートファジー活性化に関与していることが判明した. GSK3βによるオートファジー調節機序を解明するため, オートファジー活性に関与する代表的な転写因子群の発現をqRT-PCRで調べたところ, GSK3β阻害によって発現量の低下する転写因子が3種同定された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸がんのオートファジー可視化モデル細胞を作成し, GSK3βが作用する経路を推定することができたが, メタボロームとリン酸化プロテオームを組合わせた系統的な解析では, 現段階でGSK3βが制御するオートファジー関連分子候補は見つかっていない. 次年度にも継続して探索・解析する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は引き続きオートファジー関連転写因子の発現制御についての解析を進める. また, in vivoにおけるGSK3βのオートファジーに対する作用を解析するために, 大腸がん細胞皮下移植マウスにGSK3β阻害剤を投与し, 腫瘍に対する影響を解析する.
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