2017 Fiscal Year Research-status Report
メトホルミンによる抗癌治療時における認識抗原の多様性の解析
Project/Area Number |
17K15024
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山崎 千尋 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60620995)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 癌治療薬 / メトホルミン / 抗PD-L1抗体 / 癌抗原 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物モデルにおいて、近年癌治療薬として実用化されたPD-L1/PD-1結合阻害薬と、当研究室で免疫系を介した腫瘍縮小効果を持つことが見出されたメトホルミンとの併用治療が、それぞれの単独治療と比べて相乗効果があることが、予備実験にて見出されていた。これらの治療薬の作用メカニズムについて、細胞障害性T細胞の質的変化を調べるため、腫瘍浸潤T細胞をソーティングにより分取し、その遺伝子発現プロファイルを解析した。 未治療群と比較し、メトホルミン治療群、抗PD-L1抗体治療群、併用治療群では、発現量の異なる遺伝子がいくつか認められ、特に併用治療群において免疫反応に関わる遺伝子群の発現が高まることが認められた。また、いくつかの転写因子の下流に位置する遺伝子群の発現も、併用治療群において高まることが認められた。メトホルミン単独治療、抗PD-L1抗体単独治療ではこれらの遺伝子の発現を高めるのには十分でなく、これらの薬剤の作用点が異なること、併用治療の相乗効果があることが、発現プロファイル解析からも認められた。 癌治療においてPD-L1/PD-1結合阻害薬が実用化されたが、その治療効果が認められる患者は一部にとどまる。本研究において、メトホルミンの治療を併用することで初めて発現が上昇する遺伝子群があることが示されたことにより、従来PD-L1/PD-1結合阻害薬単独で効果の出なかった患者に対し、将来メトホルミン併用治療を行う根拠となりうる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
抗腫瘍免疫において、メトホルミンによる治療が細胞傷害性T細胞クローン並びに認識抗原の種類を増やしているか否かの検証 腫瘍からの細胞障害性T細胞の分取については、SONY SH800 セルソーターにより100細胞をソートし遺伝子発現解析プロファイルが行えるほどの精度を達成することができている。メトホルミン、抗PD-L1抗体、併用治療群で細胞障害性T細胞の遺伝子発現に質的な違いがあることが示されている。 T細胞受容体遺伝子配列を同定するためには、1細胞ソートサンプルからmRNAを回収することが必須となるが、RNAの分解を抑制しつつ細胞をソートすることが達成できていない。ソート後の細胞の取り扱いについては、研究実績のある研究者に助言を受けながら改善を試みている。細胞ソーティングの条件については、細胞障害性T細胞の生存率を高めるため、腫瘍組織からのサンプル調製法を改良している。 腫瘍細胞における変異抗原の同定のために、腫瘍組織からmRNAを回収した。次世代シークエンスの解析結果を元に、現在、MHC class I結合モチーフとなりうる部位の同定を試みている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究を進めていくにあたり、腫瘍内細胞障害性T細胞のT細胞受容体遺伝子配列を可能な限り速やかに同定することが必須である。ソーティングの条件検討が進めば、目標達成に前進するものと期待できる。 並行して、腫瘍の変異抗原とMHC class I結合モチーフの同定を進めていく。
|