2017 Fiscal Year Research-status Report
がん微小環境下の制御性T細胞の代謝機構を標的とした治療法開発
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17K15037
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
坂井 千香 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 研究員 (90622845)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | がん免疫療法 / がん微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍組織では免疫反応を抑制する制御性T細胞(Treg)が正常組織よりも高い割合で浸潤し、免疫抑制状態になっている。腫瘍局所でのTregの機能阻害はがん免疫療法の有効な手段として注目されている。 本研究は腫瘍に浸潤するTregのエネルギー代謝を解析し、機能抑制のための新しい標的を見出すことを目的とした。そのためにまず、酸化的リン酸化の基質を解析した。生細胞の酸化的リン酸化は現在フラックスアナライザー(XF)による解析が広く用いられている。 そこで末梢血から単離したリンパ球を用いてXFの解析を検討した。すると検出限界は2.5x10^5の細胞であった。本研究に使用可能な腫瘍組織検体からは目的とする活性化Tregが多くても10^4個程度しか単離出来ないため、XFは使用できないことがわかった。そこで、酸化的リン酸化はミトコンドリアの膜電位(MMP)により駆動されることに基づき、Tregと抗腫瘍作用のあるエフェクターT細胞(Teff)が腫瘍局所にてどのような代謝基質を用いてMMPを維持しているかを解析することにした。 本研究では低酸素イメージング内視鏡観察下で採取した食道癌を中心に解析を行った。また使用可能な検体の大きさが比較的大きい、大腸癌の手術検体も用いた。解析の結果、TILがMMPを維持している検体と低下が始まっている検体、さらに完全に低下している検体があることがわかった。TILを単離後すぐに培養液にて培養するとMMPは回復することから、MMPの低下はがん微小環境における栄養飢餓状態が影響していると考えられる。さらに現在解析中であるが、TILのMMPを維持している検体においてはTregとTeffで使用している基質が異なるという結果が出てきている。 以上の結果により今後、腫瘍局所のTregを特異的に阻害するための標的となる代謝経路を見出すことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は当初フラックスアナライザー(XF)を用いた解析を予定していた。しかし解析に必要な細胞数を患者検体から確保することが難しく、解析に使用する細胞を減らす条件検討にやや時間をとられてしまった。その後方向転換をしてミトコンドリア膜電位(MMP)に着目した解析により患者検体を用いるようになってからは順調に進展しており、腫瘍局所のTreg特異的な代謝基質を見出せることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、低酸素イメージング内視鏡観察下で採取した食道癌、及び大腸癌の手術検体を用いて解析を行っている。これまでの結果から、がんの種類によってミトコンドリア膜電位維持のための基質が異なることを示すデータが得られているため、今後、胃癌、肺癌についても同様の解析を行う予定である。 腫瘍局所のTregに特異的な基質を見出し、その基質のトランスポーターや代謝酵素の発現を腫瘍局所のTregとエフェクターT細胞(Teff)で比較し、局所のTregにおいて特異的な代謝が行われているメカニズムを明らかにする。さらにそのトランスポーターや代謝酵素の阻害剤について、腫瘍局所のTregに特異的に作用するがん免疫療法の新規薬剤としての可能性を検討する。
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