2017 Fiscal Year Research-status Report
網羅的ゲノム解析に基づく難治がんのバイオマーカー・治療標的の策定
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17K15038
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
川端 麗香 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90721928)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RNA-seq / 小細胞肺がん / 肺扁平上皮がん / トリプルネガティブ乳がん / 新規治療標的 / 化学療法耐性機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、診断技術や治療 技術の向上にも関わらず治癒率の低い難治がんへの新規治療アプローチの開発を大目的とし、オミックス解析を展開、公共データベースに登録されている網羅的ゲノム・臨床情報を統合利用することにより、それらの予後予測因子、治療効果予測因子、および治療標的の同定を試みる。 今年度は、肺がん臨床検体・細胞株を対象とした次世代シーケンス解析等を行い、小細胞肺がんおよび肺扁平上皮がんにおける新規治療標的の同定、化学療法耐性機構の解明に寄与した(Sundaresan V, et al., Cancer Genetics, 216-217: 20-28, 2017, Otaka Y, et al., Clinical Cancer Research. 23(13):3442-3452, 2017, Bao P, et al., Ann Surg Oncol. 2017 Dec;24(13):4017-4024.)。40検体の肺腺がんRNA-seq解析および200例のデータベース解析より、高齢者がん症例に着目した新規治療標的候補を複数同定した。現在、細胞生物学的意義の検討を計画中である。 乳がん細胞株を対象としたRNA-seq/ shRNA-seq統合解析を行い、公共データベースに登録、1,900例の臨床検体の公共データベース解析を統合し、トリプルネガティブ乳がんにおける新規バイオマーカーを同定した(Handa T, et al., J Surg Oncol. In press, 2017)。臨床検体の全エクソーム解析により、乳腺腫瘍の進展に関わる遺伝子変異を同定した(Arai H, et al., Br J Haematol. in press, 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に計画していた肺がん研究については、小細胞肺がんおよび扁平上皮がんにおいて、新規治療標的の同定、化学療法耐性機構の解明に繋げることができた。腺がんにおいては、腫瘍・正常組織ペア解析およびデータベース統合解析から候補の絞り込みまで行ったものの、生物学的意義の検討には至らなかった。一方で、来年度に計画していた乳がん研究について、次世代シーケンサーのデータ解析およびデータベース解析を進め、悪性度の高いトリプルネガティブ乳がんの新規予後マーカーの同定に結ぶことができた。以上の結果から、総合的に、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
肺がんにおける治療標的候補の生物学的意義と有用性を検討するとともに、乳がんにおけるRNA-seq/ shRNA-seq統合解析にパスウェイ解析を追加し、トリプルネガティブ乳がんにおける新規治療標的経路を同定する。さらに変異データと組み合わせて特定のTNBCがん細胞特異的変異のある場合のみ殺細胞効果を示す「合成致死」を引き起こす標的を策定する。 肺がん、乳がん症例を対象としたIso-seq解析を行い、がん特異的に発現する新規転写産物を探索する。actionableなドライバー変異をもたない症例を中心に、また予後不良例と良好例の比較が可能な組み合わせで症例を選択し、がん部と対 応する患者の非がん部由来のRNAを解析に供する。PacBio RS IIを用いたSMRT法により、網羅的転写産物、あるいは、これまでの研究による候補遺伝子の転写産物を対象に解析を行う。検出された新規転写産物はダイレクトシーケンス法で配列を、定量的PCR法で発現量を確認し、生物学的意義と有用性の検討を行う。 以上の結果を総合して、肺がん、乳がんにおけるバイオマーカー、治療標的を同定し、臨床展開の可能性を検討する上での本手法の有用性を示すとともに、同定された遺伝子の変動に基づいた先端的診断、治療法の開発研究を推進する。
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Causes of Carryover |
今年度に細胞実験を実施しなかったため、翌年度分として当該助成金が発生したが、次年度以降の細胞実験で使用予定である。
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Research Products
(6 results)