2019 Fiscal Year Research-status Report
網羅的ゲノム解析に基づく難治がんのバイオマーカー・治療標的の策定
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17K15038
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
川端 麗香 群馬大学, 未来先端研究機構, 講師 (90721928)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肺がん / 免疫組織染色 / バイオマーカー / RNA-seq / 新規治療標的 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、診断技術や治療技術の向上にも関わらず治癒率の低い難治がんへの新規治療アプローチの開発を大目的とし、オミックス解析を展開、公共データベースに登録されている網羅的ゲノム・臨床情報を統合利用することにより、それらの予後予測因子、治療効果予測因子、および治療標的の同定を試みる。 本年度は、500症例以上の肺がん臨床検体及び100例以上の肺がん細胞株を対象とした免疫組織染色・定量的RNA発現解析により、神経内分泌腫瘍の判別マーカーとしてStathmin-1が有用であることを示し、論文として発表した(Shimizu K, Goto Y, Kawabata-Iwakawa R, Ohtaki Y, Nakazawa S, Yokobori T, Obayashi K, Kawatani N, Yajima T, Kaira K, Mogi A, Hirato J, Nishiyama M, Shirabe K. Stathmin-1 is a useful diagnostic marker for high-grade lung neuroendocrine tumors. Ann Thorac Surg. Volume 108, Issue 1, July 2019, Pages 235-243)。 また、肺扁平上皮がん臨床検体144症例と2例の細胞株を対象とした免疫組織染色・次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析により、肺扁平上皮がんの新規治療標的の策定を行っており、論文投稿中である。 乳がんに関しては、新たな標的分子を同定し、現在、多数の臨床検体を対象に確認を進めている。 さらに、高齢者がんの特性に着目した、マルチオミックス解析によるバイオマーカー・標的ネットワークの探索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年5月1日から令和元年5月現在まで、産前産後休暇、育児休業のため研究を中断していた事もあり、論文発表は少ないが、計画していた肺がんの研究を順調に進め、神経内分泌肺がんの新規判別マーカーの同定に結ぶことができた。乳がんの解析も引き続き進めている。以上の結果から、総合的に、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
乳がんにおける治療標的候補の生物学的意義と有用性を検討するとともに、乳がんにおけるRNA-seq/ shRNA-seq統合解析にパスウェイ解析を追加し、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)における新規治療標的経路を同定する。さらに変異データと組み合わせて特定のTNBCがん細胞特異的変異のある場合のみ殺細胞効果を示す「合成致死」を引き起こす標的を策定する。 肺がん、乳がん症例を対象とした転写産物解析を行い、がん特異的に発現する新規転写産物を探索する。actionableなドライバー変異をもたない症例を中心に、また予後不良例と良好例の比較が可能な組み合わせで症例を選択し、がん部と対応する患者の非がん部由来のRNAを解析に供する。PacBio RS IIを用いたSMRT法を計画していたが、機器の故障のため、ナノポアを用いた網羅的転写産物、あるいは、これまでの研究による候補遺伝子の転写産物を対象に解析を行う。検出された新規転写産物はダイレクトシーケンス法で配列を、 定量的PCR法で発現量を確認し、生物学的意義と有用性の検討を行う。 以上の結果を総合して、肺がん、乳がんにおけるバイオマーカー、治療標的を同定し、臨床展開の可能性を検討する上での本手法の有用性を示すとともに、同定された遺伝子の変動に基づいた先端的診断、治療法の開発研究を推進する。
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Causes of Carryover |
次世代シーケンシング試薬等の変更、新型コロナウィルスの影響による学会不参加等により、次年度使用額が生じた。次年度に細胞実験およびシーケンシング解析に使用する試薬費として使用予定。
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