2018 Fiscal Year Research-status Report
栄養バランス変化への適応能力を支える全身性シグナリングの解明
Project/Area Number |
17K15039
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 佑佳子 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (50646768)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 栄養バランス / 適応 / 種間比較オミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを含む自然界の生物は、各々にとって適切な栄養を摂取することで生命活動を行っている。しかし、栄養バランス変化に対して、個体はどのように応答し適応しているか、そしてその適応能力や生体応答は生物種間でどのように異なるかについては、これまでほとんどわかっていない。モデル生物キイロショウジョウバエは、自然界では全世界の人家近くに生息し、発酵した多種類の果物を食性とする(広食性)。一方、その近縁種の中には、特定の地域に生息し、発酵した単一の植物のみを食性とする(狭食性)種も存在する。これらの種間での比較マルチオミクス解析から見えてきた、栄養バランス変化に対する生体応答や適応能力のちがいを基に、適応能力を支える分子機構の解明を目指す。幼虫全身を用いたメタボローム解析によって、広食性のキイロショウジョウバエでは代謝の恒常性を維持しているのに対して、狭食性種では、多数の代謝産物が高炭水化物食条件下で増加していることがわかった。Activinシグナリングの変異体のキイロショウジョウバエでも、同様に代謝産物が増加していた。現在、これらの結果をもとに論文を投稿し、改訂を行っている。さらに、詳細な分子基盤解明に向けた解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までの結果から得られた仮説について検証を進めるために、発生段階の異なるサンプルを用いたRNA-seq解析を行った。また、適応能力の種間での違いを考察するために、自然界での食性についてもさらに掘り下げて解析を行った。さらに、これまで解析が遅れていた狭食性の一種について、栄養依存的な遺伝子発現解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
栄養バランス変化への柔軟な適応能力を生み出す分子機構について、より詳細に解析を進めるために、現在、その候補となる分子の探索を行っている。関与する分子を特定できれば、これまで明らかにしてきた Activinシグナリングによる代謝調節機構との関係について、検証を進めていく。 また、栄養依存的な遺伝子発現の比較解析により、狭食性種の間での応答の違いや、その背景にある分子機構についても明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
理由:当初計画に従い順調に研究を進めた結果、広食性と狭食性の近縁種間での栄養バランスへの適応能力がどのように異なるか、そしてその背景にある生体応答の違いについて明らかにし、論文の改訂を行っている。しかし、より詳細な分子機構については、今後も実験を重ねて解明する必要があり、次年度使用額が生じた。
使用計画:Activin シグナリングの上流や下流でどのような分子が関与することによって、代謝調節や個体の適応が達成されているか、そしてそれらの機能が近縁種ではどのように異なっているかを解析する。具体的には、候補遺伝子の探索および RNA-seq による遺伝子発現解析から仮説を立て、分子機構を明らかにする。また、狭食性種の間での応答の違いを生む分子機構についても解析を進めていく。
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Research Products
(5 results)