2019 Fiscal Year Research-status Report
鳥類群集の長期変化傾向:全国探鳥会記録と階層ベイズモデルによる推定
Project/Area Number |
17K15057
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
片山 直樹 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 研究員 (10631054)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 鳥類 / 市民科学 / 保全 / 個体数変化 / トレンド推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、引き続き日本野鳥の会よりお借りした過去の支部報をもとに、探鳥会記録の電子データ化を進めた。関東地方のデータ入力が終了し、その他の地域についても、一部のデータは既に野鳥の会によって電子化されているため、それ以外のデータについて入力を進めている。データ入力作業を契約職員に依頼することで、作業の効率化をはかっている。今後も科研費の申請期間中にデータ入力の完了を目指すが、解析および論文化までは難しい可能性がある。 そこで前年度に続き、探鳥会記録だけではなく、モニタリングサイト1000の里地データを用いた解析も進めている。2009年~2017年にかけての調査結果を用いて、種の発見率を考慮したN-mixture modelを構築することで、個体数の変化を傾向を推定した。その結果、ホオジロなど一部の種の減少傾向が明らかになりつつある。また、場所ごとの変化傾向の違いを明らかにし、統計ソフトRを用いた地図化も行った。この成果は、日本生態学会のシンポジウムで発表予定だった成果である(学会自体は中止となった)。今後、最新の統計モデルの知見を活用しながら、統計モデルの改良と論文化を進める。 また全国データだけでなく、よりローカルなデータを活用することが、農地性鳥類のトレンド推定においては重要である。そこで、茨城県で20年間にわたって行われたタマシギの個体数調査をもとに、やはりN-mixture modelを構築することで、タマシギ個体数が過去20年間にわたり減少していること、そして湛水休耕田の減少がその要因の一つであることが明らかとなった。この結果は、農地性鳥類の減少傾向とその要因を明らかにした貴重な事例であり、彼らの保全において重要な示唆をもたらす。成果は、日本鳥学会の口頭発表を行ったほか、国際誌のAgriculture, Ecosystems, and Environmentに受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった探鳥会の記録の活用にはデータ入力量の膨大さから遅れが出ているものの、それ以外のモニタリングサイトデータや経年調査データの活用は非常に順調であり、すでに国際誌に査読付き論文を出版することができたため、総合的には順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、探鳥会記録のデータ入力の完了(またできる限りの解析と論文化)、およびモニタリングサイトデータの統計解析の改良と論文化を進めていく。後者については、里地データだけでなく森林草原データも加えた統合的解析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
既存のデータ活用や生態学会の中止など、研究計画の変更により旅費等が削減されたため。次年度の旅費に活用予定だが、コロナなどの理由により出張が困難な場合には、データ入力をさらに加速化するための人件費として使用予定である。
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Research Products
(3 results)