2017 Fiscal Year Research-status Report
RNAにより誘導される核内構造体の相分離メカニズムの解明
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17K15058
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 智弘 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (90732280)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Long noncoding RNA / 核内構造体 / 相転移 / NEAT1 / パラスペックル / Low complexity domain / CRISPR/Cas9 / ヒト一倍体細胞株 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は、分子をあるべき場所に区画化する機構を有しており、特定の分子を集積させることにより、特異的な反応の促進や因子の隔離を行うことで、生命活動に根源的な役割を果たしている。このような区画化は細胞膜によって隔てられた細胞内小器官だけではなく、細胞膜を持たない細胞内構造体によっても行われている。このような細胞内構造体については、これまでに核や細胞質に多様な構造体が存在することが明らかになってきている。近年、この構造体形成の原動力として、相分離機構の重要性が明らかとなってきており、細胞内でこのような構造体が液滴、ハイドロゲル、アミロイドなどの状態で存在し、周りの環境から相分離されていることが明らかになりつつある。 この内、一群の核内構造体は、RNAが骨格として必須の役割を持つ。しかし、このRNAに依存した構造体の形成機構やRNAがどのようにタンパク質とともに構造体の性質を規定しているか、その詳細な機構は明らかではない。本研究では、まず、NEAT1 lncRNAが骨格となる核内構造体パラスペックルをモデルとして、RNA 配列を変えた際の構造体の形成や性状をin vivo及びin vitroシステムを用いて解析を進め、そのメカニズムの解明を目指した。 その結果、パラスペックルの形成、パラスペックル内部のRNAおよびタンパク質の配置、さらにパラスペックルが独立した構造体として存在するために必要なNEAT1 lncRNAの領域の絞り込みに成功した。さらに、RNA上へのパラスペックルタンパク質の繋留実験などにより、これらの機能を担うタンパク質の同定にも成功しつつあり、さらにその詳細なメカニズムの解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのCRISPR/Cas9を用いた変異体解析から、パラスペックルの形成に必要な機能RNAドメインを同定しており、その機能を支える因子を探索するため、NEAT1上に種々のパラスペックルタンパク質を繋留した。その結果、特定のパラスペックル構成タンパク質を繋留した場合にのみ、パラスペックルが誘導されたことを見出した。これは、RNA上に繋留されたタンパク質により、相転移が誘導された結果であると推察された。また、パラスペックル形成を誘導するタンパク質は機能RNAドメインに結合することもin vitroおよびin vivoにおける実験から明らかとなった。さらに、in vitroにおいて、この特定のタンパク質がNEAT1 lncRNAの特定の領域と結合することで高次構造体を形成することを示す新たな実験系の確立にも成功した。また、NEAT1はパラスペックル内で特徴的な空間的な配置を取ることがわかっているが、CRISPR/Cas9による樹立した変異細胞株と超解像度顕微鏡・電子顕微鏡を用いた解析から、この配置に必要な領域を明らかにすることにも成功した。また、パラスペックルの独立した形成に必要な領域の絞り込みも進んでいる。さらに、これらの領域と機能を共にするタンパク質の同定も進んでおり、NEAT1によるパラスペックルの形成および性状決定機構が見えてきつつあることから、計画通り順調に進行しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、NEAT1の特定のRNA 領域が構造体の形成および性状維持に重要であることが明らかとなっており、さらにそれらの機能に関わるタンパク質も明らかになりつつある。そこで、このメカニズムをさらに深く理解するため、キーとなるタンパク質の結合に重要なRNA領域の結合サイトをin vivoおよびin vitroの実験系を用いて、配列あるいは構造的なモチーフにまで落とし込む。さらに、タンパク質側についても、どういったドメインや性質がこれらの機能に重要であるかを明らかにするため、変異体を用いた解析を進める。さらに、精製タンパク質を用いて、相分離に実験を進める。この際には、共同研究者の協力を得る予定である。また、生物理的な性質についても、これまでに確立した種々の変異NEAT1を発現する細胞株やRNA上への繋留による相補実験などを用いることで解析を進める。また、NEAT1以外のarcRNA についても解析を進めることで、RNAを骨格とする核内構造体がどのように形成され、その性質が決定されているかについて一般的なメカニズムの理解に繋げる。
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Causes of Carryover |
ほぼ計画通りの使用となったが、5万円弱の持ち越しとなった。この分については、今年度行う実験において、抗体、プライマー、細胞培養関連試薬などの購入が必要となることから、それに当てる予定である。
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Research Products
(12 results)