2017 Fiscal Year Research-status Report
不妊原因因子SYP-1/SYCPが減数分裂の染色体分配を保障する分子メカニズム
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17K15064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 綾 京都大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (40595112)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 減数分裂 / 染色体 / 線虫 / 不妊 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、減数分裂において、染色体の正確な分配が保障されている分子メカニズムを明らかにすることにより、正常な卵子、精子が作られる仕組みを理解することを目指す。特に、哺乳類の減数分裂タンパク質SYCPの機能的ホモログである、線虫のSYP-1タンパク質に着目し、SYP-1リン酸化の作用機序を明らかにすることで、SYP-1リン酸化が、正常な減数分裂に必要であるメカニズムの一端を明らかにした。まず我々は、減数分裂期特異的なシナプトネマタンパク質の1つであるSYP-1が、C末端の12箇所でリン酸化されること、そのうちのThr452におけるリン酸化が特にSYP-1機能に重要であることを、生化学実験と、変異株の表現型解析より明らかにした。また、SYP-1の非リン酸型変異株では、減数第一、第二分裂に必要な、染色体の非対称性(短腕、長腕の確立)に不具合がでるために、線虫が不妊になることを明らかにした。次に、SYP-1のリン酸化の機能は、シナプトネマ構造に、Poloキナーゼをリクルートしてくることも見出した。次にリン酸型SYP-1の局在を、特異的抗体を用いて可視化したところ、リン酸型SYP-1は、減数分裂期の初め、染色体のシナプトネマ軸の全長に広がった後、交叉が形成されると、染色体の短腕(交叉から、近いほうへの染色体末端にかけての染色体領域)へ局在をダイナミックに変化させること、そしてこの際、Poloキナーゼを短腕にリクルートしてくることで、最終的に、染色体の短腕に染色体分離因子をリクルートする分子経路を確立することを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、SYP-1をリン酸化する上流キナーゼの同定を目指していたが、海外の他の研究室がすでにキナーゼを同定したとの情報を入手したため、一部計画を変更し、SYP-1リン酸化の下流の分子経路を同定する方向に研究の重点を置いた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、リン酸型SYP-1が、染色体軸全長から短腕に局在を変化させる作用機序を明らかにすることで、染色体の短腕、すなわち、減数第一分裂で染色体が分離される領域が指定されるメカニズムを理解することを目指す。線虫において、交叉は、相同染色体ペアにつき、必ず1つ作られるが、交叉が形成されたのち、どのように染色体上の交叉の位置情報が感知され、染色体末端に向けて、(交叉からみて)どちらの末端が近く(短腕)、遠い(長腕)か、を検出する分子メカニズムは全く謎である。この問題にアプローチするため、生細胞を用いたイメージング技術と、固定細胞を用いた免疫染色画像の定量的解析により、リン酸型、および、非リン酸型SYP-1が交叉形成後に局在を変化させるダイナミクスを明らかにすることを目指す。また、相互作用キナーゼであるPoloキナーゼの下流因子を探索し、染色体の短腕(減数第一分裂における分離面)領域を確立する分子カスケードを明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
論文執筆に予定よりも時間がかかったためと、競争相手となる研究室と一部計画していた実験が重複していたため、一部研究計画に変更があり、助成金の使用に変更が生じた。平成30年度は、繰り越した助成金と、該当年度分の助成金を用いて、SYP-1リン酸化から染色体分離面の確立にいたる下流経路の同定、およびリン酸型SYP-1の局在ダイナミクスを明らかにすることを目指す。
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