2017 Fiscal Year Research-status Report
Structure based analysis of human herpesvirus 6 transactivator IE2
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17K15075
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西村 光広 神戸大学, 医学研究科, 助教 (40510285)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | X線結晶解析 / ヒトヘルペスウイルス6 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度では既に立体構造の決定に成功したHHV-6A IE2 C末端ドメインに関して、さらなる構造解析を行い、その機能部位について解析を行った。IE2 C末端ドメイン上には正電荷が集中する領域、類縁のヘルペスウイルス間で相同性の高い保存領域、そしてDNA結合モチーフであるヘリックスターンヘリックスに類似した構造領域があり、これらがIE2の機能部位である事が示唆されていた。そこで、推定された機能部位に変異を持つ各種のIE2変異体発現系を作製し、転写活性化能への影響を解析した。ルシフェラーゼレポーターアッセイ系による転写活性化能の評価法を確立し、各IE2変異体の転写活性化能を解析した結果、正電荷が集中する領域及び保存領域に変異を導入した場合では、いずれもIE2の転写活性化能が著しく減弱し、これらの領域がIE2-CTDにおける機能部位である事が示された。一方で、ヘリックスターンヘリックスに類似の構造領域への変異については、転写活性化能に影響が見られなかった。本成果について国内学会および国際学会で発表を行うとともに、学術論文としてJournal of virologyに投稿し、公開した。 これに加え、IE2 N末端領域に関して新たに立体構造を行うために、N末端領域中の構造ドメインの解析を試みた。二次構造予測によってN末端領域中で二次構造が集中すると予想された部分配列の大腸菌発現系を用いて、タンパク質の発現および精製を行った。その結果、これらのN末端領域の部分配列では発現または精製中にタンパク質の分解が起こり、分解による断片化のパターンを考えても、安定な立体構造を形成していないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度では、HHV-6A IE2 C末端ドメインで見出された機能部位の変異解析を行う事ができ、その結果と構造解析の結果を合わせて、学術論文として発表する事ができた。当初の計画ではIE2 C末端ドメインとDNAの複合体についても立体構造を決定する予定であったが、本成果をまとめるにあたって、IE2 C末端ドメインが他のウイルスのDNA結合タンパク質と構造上の相同性を持つことが明らかとなり、DNA結合様式に関するモデルを作製する事が出来た。そのため、IE2 C末端ドメインとDNAとの複合体の立体構造解析については実施する必要性が低くなり、代替としてモデルによってDNA認識様式に関する一定の知見を得る事が出来た。N末端領域の構造解析に関しては、部分的な構造ドメインの決定及び単離には至らなかったものの、予想より広い領域が一体となって立体構造を形成している可能性が示唆され、N末端領域のドメイン構造に関して、次年度の研究に繋がる知見が得られた。以上の事より、研究計画全般としてはおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度ではIE2 N末端領域の立体構造解析を目標として研究を実施する。平成29年度の研究結果から、N末端領域は広い範囲が一体となって一つの構造を形成している事が示唆されたため、より広いN末端領域の大腸菌発現系を構築し、発現を試みる。またアミノ酸配列解析を進めた結果、C末端ドメインの構造解析に用いたHHV-6A由来のIE2と、HHV-6Aと90%のゲノム相同性を持つHHV-6Bに由来するIE2では、そのC末端ドメインの配列類似性に反して、N末端領域では配列の相同性が比較的低いことも明らかとなっている。そこで、HHV-6AとHHV-6B両方のIE2についてN末端領域の発現を検討する。これらの検討により、いずれかのタンパクが発現できた場合には、分解断片の解析から発現領域の最適化を行い、精製法を確立する。精製タンパク質が得られた際には、結晶化を行い、大型放射光施設SPring-8でのX線結晶回折測定実験を実施する事で、その立体構造を解明する。 また得られた精製タンパク質を利用する事で、共沈降法等によって、細胞内に存在すると予想されるIE2結合因子の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
平成29年度では国際学会での発表を含め旅費の必要性が高く、物品費との調整の結果として2,417円の次年度使用額が生じた。この次年度使用額2,417円に関しては、平成30年度の研究を遂行するために必要な実験のための物品費として使用する事を計画している。
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Research Products
(6 results)