2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K15082
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
村山 祐子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (50708592)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 転写終結 / クライオ電顕 |
Outline of Annual Research Achievements |
RNAポリメラーゼ(RNAP)は、細胞内の遺伝情報をDNAからRNAに転写する、分子量約400 kDaの巨大なタンパク質複合体である。RNAPは転写の様々な局面において、その局面に必要とされる機能(転写開始領域への結合、RNA合成、合成エラーの校正、RNA合成の休止および終結等)を切り替えている。この機能の切り替えは、タンパク質因子やRNAP自身によって合成された新生RNAが、特定の局面においてRNAPに相互作用することで成し遂げられている。 RNAPによる転写の最終段階は、RNAの合成を終えたRNAPが鋳型DNAと新生RNAから解離する「転写終結」である。転写終結因子Rhoは分子量約300 kDaのRNAヘリケースであり、転写中の新生RNAを介してRNAPに相互作用し、転写終結を引き起こすと考えられている。本研究では、Rhoを結合したRNAP複合体の構造を解明し、転写終結の構造基盤を明らかにすることを目指している。 本研究においては、Rhoの結合領域となるRNAを転写中のRNAP複合体(伸長複合体)を、RNAPに鋳型DNAを転写させることによって再現した。この伸長複合体にRhoを加えて転写終結複合体を調製し、クライオ電子顕微鏡構造解析によってその構造を決定した。この複合体構造から、Rhoは伸長複合体における新生RNAの出口に直接結合することが明らかになった。伸長複合体のDNAおよびRNA結合チャネルはRhoの結合によってやや開いており、RNAPがDNA/RNAから解離しやすい状態となっていた。また、伸長複合体へのRho結合部位はリボソームの結合部位と重複しており、細胞内では翻訳と転写終結が相互排他的に行われることに対する説明となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸菌および高度好熱菌由来のRNAPとRhoを調製し、転写終結複合体の再現方法を検討したところ、好熱菌由来のタンパク質でより性質のよい複合体が得られたため、以降は好熱菌由来タンパク質を用いて研究を進めた。Rhoを効率よくRNAに結合させるためには約100mer程度の長い結合領域が必要となる。従来は90mer程度の合成RNAをRNAPと鋳型DNAに混合することで、長いRNAを含むRNAP伸長複合体を再現していたが、この方法で調製した伸長複合体ではRho依存転写終結の効率が低いという問題があった。そこで、Rho結合領域に相当する鋳型DNAをRNAPに転写させ、その後活性のある(転写の進んでいる)伸長複合体のみを精製して用いたところ、Rhoの結合と転写終結効率が劇的に改善された。この方法で調製した伸長複合体にRhoを加えたものについてクライオ電子顕微鏡による構造解析を行い、Rhoを結合したRNAP伸長複合体の構造を分解能約7オングストロームで決定した。また、Rhoとの結合領域を欠失させたRNAP変異体において、Rho依存転写終結の活性が顕著に変化することが明らかになった。当初の計画では昨年度を目安に本研究を終える予定であったが、さらなる構造解析およびRNAP変異体を用いた機能解析を行うため、本年度まで研究計画を延長した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの構造解析において、Rho-RNAP複合体には多種類のコンフォメーションが存在することが分かってきた。現在までに得られている構造の分解能を改善するためには、サンプル中における複合体の割合を増やすこと、ないしは特定のコンフォメーションに固定されたサンプルを調製することが必要と考えられる。そのため、サンプルの架橋方法やGraFix法等を用いた架橋サンプルの精製方法を検討する。架橋サンプルにおいては、クライオ電子顕微鏡構造解析と並行して、クロスリンク質量分析による架橋部位の解析を行う。また、RNAPのRho結合領域に変異を導入したものの調製を進めており、これらの変異体RNAPを用いてRho依存転写終結の機能解析を行い、並行してクライオ電子顕微鏡構造解析を試みる。
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Causes of Carryover |
合成RNA等の単価の高い物品の購入を想定して、当初は研究計画の前半に多めの使用額を設定していたが、タンパク質精製に事前の想定より時間を費やしたこと、サンプル調製方法の変更により長鎖合成RNAの購入を見送ったことなどにより、研究計画前半での物品購入費が減少した。 本年度の研究費は、主に電子顕微鏡用グリッドや活性測定に用いるプレキャストゲル等の消耗品購入費、サンプル調製に必要となる合成DNA、RNA等の購入費、研究所外の電子顕微鏡利用費、論文の校正費等に使用する計画である。
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Research Products
(1 results)