2017 Fiscal Year Research-status Report
結核菌の膜輸送体の結晶構造解析に向けた大量生産系の構築
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17K15087
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
椛島 佳樹 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (00580573)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膜輸送体 / 結核菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
結核菌にはドラッグターゲットとなる膜輸送体が数多くあるにもかかわらず、大量発現系の構築が困難であるため研究は遅れている。本研究では、結核菌の膜輸送体の結晶構造解析に向けた大量発現系の構築を目的とする。平成29年度は結核菌と同属で非病原生のMycobacterium smegmatisを宿主とし、① 新たな蛋白質発現用ベクターの開発、② 発現誘導条件の最適化、③ 結核菌由来ctpF(基質不明のイオンポンプ)とmntH(Mn2+輸送体)の発現実験の3点を並行して行った。①に関してはM.smegmatisを宿主とした可溶性蛋白質の大量発現において実績のある2種の発現系(T7システム、tetORシステム)の導入に加え、Cu+感受性遺伝子のプロモーターを利用した新たな発現系の構築を試みた。Cu+排出ポンプをコードするM.smegmatis由来csoR遺伝子のプロモーター領域をPCRで増幅し、E.coli-M.smegmatisシャトルベクターに導入した。プロモーター下流にレポーターとしてGFP遺伝子を導入し発現強度を比較したところ、発現量が既存のベクターに比べて極めて低いことがわかった。②についてはGFPをレポーター遺伝子として発現誘導条件の検討を行った。その結果、培地中の炭素源としてコハク酸を使用した時に発現量が多い傾向にあった。さらに、ペプトンや酵母抽出物などの添加は菌体量を増やすものの、発現誘導時の目的蛋白質の発現量を大幅に減少させることが分かった。③については結核菌由来の2つの膜輸送体であるctpFとmntHのN/C末端にアフィニティタグとしてHis-tagあるいはStrepII-tagを付加した発現用ベクター(計8種)を設計し、M. smegmatisに導入した。作製した発現候補株については、②で得られた結果をもとに発現誘導条件の検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
M.smegmatisの培養特性などが一般的な発現宿主である大腸菌とは大きく異なっており、形質転換、菌体破砕などの実験条件の最適化に予想以上に時間を要した。したがって、当初の計画よりはやや遅れているものの、発現誘導時に最適な炭素源の種類などの新たな知見やノウハウは着実に蓄積している。また、現在までにターゲットとする遺伝子の合成や各種アフィニティタグの付加など基本的コンストラクト設計・構築は完了しており、研究期間内での目的達成は十分に可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度には新たな発現用ベクターの開発も試みたが、既存ベクターのプロモーター活性が十分に強いため次年度以降は既存システムを利用する。平成30年度は、構築済みの発現候補株の培養条件を最適化するとともに、目的蛋白質のフォールディングや脂質膜への挿入を促進するタグの付加なども検討する。まずは大腸菌で異種の膜蛋白質の大量発現に成功している融合タグがM.smegmatisにおいても機能するかを検討する。また、本研究でターゲットとしているctpFとmntHは膜貫通ヘリックスが10本以上から構成されており特に発現難度が高い。従って、発現実験のコントロールとして膜表在性蛋白質の発現実験も並行して行う。候補としてはドラッグターゲットとして研究報告があるエネルギー代謝系の酵素の発現を試みる。大量発現が確認できたものについては精製条件の検討、機能解析などを行う
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Causes of Carryover |
初年度には小型振とう培養器を購入予定であったが、予備実験の段階では他予算で購入した機器が使用可能であったため見送った。しかし、現在は検体の増加に伴い既存の機器のみでは対応できない状況である。そこで、平成30年度には振とう培養器を導入し実験の効率化を図りたい。
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