2017 Fiscal Year Research-status Report
脂肪細胞における新規インスリンシグナル伝達経路とその破綻による肥満抑制機構の解明
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17K15093
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
竹中 延之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20610504)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Rac1 / 低分子量GTP結合タンパク質 / インスリン / 糖取り込み / 糖尿病 / 肥満 / 細胞内シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、骨格筋細胞での新規糖取り込み調節因子として同定した低分子量GTPase Rac1が、脂肪細胞でも同様の機能を担う可能性を示唆している。そこで平成29年度は、汎用されている糖輸送担体GLUT4の細胞膜への移行の可視化法ならびに独自開発した内在性の活性型Rac1を可視化できる“Rac1の活性化動態イメージング法”を駆使し、脂肪細胞におけるRac1の機能解析を行った。まず、脂肪細胞培養モデルである3T3-L1細胞を用いて検討を行った。その結果、インスリン刺激および既知のインスリンシグナル伝達因子であるホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)の恒常的活性型変異体の異所性発現により、Rac1の活性化ならびにGLUT4の細胞膜移行の誘導が認められた。一方、これら応答は、PI3K阻害剤により完全に抑制された。Rac1の活性化誘導については、マウス脂肪細胞の初代培養細胞および脂肪組織においても、同様の結果が得られた。 次に、Rac1がGLUT4の細胞膜移行を誘導する機構の解析を行った。脂肪細胞でのGLUT4の細胞膜移行に低分子量GTPase RalAが関与することが知られている。そこで“Rac1の活性化動態イメージング法”を応用し、RalAの活性化状態を検討した。その結果、3T3-L1細胞ならびにマウス脂肪細胞の初代培養細胞において、インスリン刺激および恒常的活性型PI3KによりRalAの活性化誘導が認められた。一方、インスリン刺激によるRalAの活性化は、PI3K阻害剤およびRac1阻害剤により完全に抑制された。以上の結果より、Rac1は脂肪細胞においてもインスリン応答性の糖取込み機構に関与し、その分子機構として、Rac1はPI3Kの下流で活性制御され、活性化されたRac1はRalAを介してGLUT4の細胞膜移行を誘導する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究実施計画に基づいた解析により、Rac1の新たな機能を見出し、その成果を報告することができた。また、脂肪細胞特異的rac1欠損ob/obマウスの作出に関しても、樹立間近であることから、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の2年度目の計画にある通り、Rac1を介したインスリン応答性の糖取込みシグナル伝達経路の解析については、脂肪細胞におけるRac1の直接の活性化因子(GEF)の探索・同定など、未知の制御因子の探索を進める。また、作出した脂肪細胞特異的rac1欠損ob/obマウスの表現型解析行い、Rac1欠損による肥満の抑制メカニズムの解明を目指した研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
想定していた旅費の支出がなくなり、その分を物品購入に充当したが残額が生じた。 使用計画としては、次年度の物品費に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)