2018 Fiscal Year Research-status Report
脂肪細胞における新規インスリンシグナル伝達経路とその破綻による肥満抑制機構の解明
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17K15093
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
竹中 延之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20610504)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Rac1 / 白色脂肪細胞 / 肥満 / 糖尿病 / インスリン / 細胞内シグナル伝達 / 糖取り込み / 脂肪酸取り込み |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪細胞培養モデルである3T3-L1細胞を用いた前年度の解析により、Rac1は既知のインスリンシグナル伝達因子であるホスホイノシチド3キナーゼ(PI3K)の下流で活性制御されていることを明らかにした。そこで平成30年度は、PI3Kの下流でインスリンシグナル伝達因子として機能しているセリンスレオニンキナーゼ2(Akt2)とRac1との関係性の検討を行った。3T3-L1細胞において、Akt2の恒常的活性型変異体の異所性発現により、Rac1の活性化ならびにGLUT4の細胞膜移行の誘導が認められた。一方、これらの応答は、Akt2特異的阻害剤により完全に抑制された。このことから、Rac1はPI3K-Akt2経路の下流で活性制御されていること、さらに、Akt2-Rac1経路の活性化が脂肪細胞の糖取り込みに中心的な役割を担っていることが強く示唆された。 脂肪細胞特異的rac1ノックアウト(adipo-rac1-KO)マウスを用いた解析の結果、脂肪細胞特異的rac1 KOマウスはコントロールマウス(Adiponectin-Creマウス)と比較して摂餌量に差はないものの、低体重であることが明らかとなった。さらに、耐糖能とインスリン感受性を測定したところ、adipo-rac1-KOマウスではいずれも低下傾向が認められた。さらに精巣上体周囲の白色脂肪組織を観察したところ、その重量の低下および白色脂肪細胞の肥大化の抑制が認められた。以上の結果より、脂肪細胞において、Rac1はインスリン応答性糖取り込みと脂肪細胞の肥大化に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
脂肪細胞特異的rac1欠損ob/obマウスを作出し、Rac1欠損による肥満の抑制メカニズムを明らかにする予定であったが、作出の過程で想定以上に妊娠率が悪い上、食殺による産仔喪失が重なった。これにより、解析に必要な個体数を確保できず、予定していた解析を遂行することが出来なかった。このため、本研究を遂行するために補助事業期間延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪細胞特異的rac1欠損ob/obマウスの産仔数を増やし、解析に必要な個体数を確保する。そして、平成30年度に予定していた表現型解析を行い、Rac1欠損による肥満の抑制メカニズムの解明を目指した研究を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
解析に必要な脂肪細胞特異的rac1欠損ob/obマウスの個体数が得られず、当初解析費用として計上していた予算が未使用となった。今回、補助事業期間延長の承認を得られたため、未使用の予算を次年度へ繰り越すこととした。
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