2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K15097
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
芳賀 淑美 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター がんオーダーメイド医療開発プロジェクト, 研究員 (40525789)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 糖鎖 / 質量分析 / グライコプロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質のO型糖鎖修飾は多くの生理機能を持つことが知られている。特にがんでは特異的な糖鎖構造異常が高頻度に見られ、がん細胞の浸潤、転移、微小環境構築などに関わるだけでなく腫瘍マーカーとしても利用されている。しかしO型糖鎖修飾の変化を付加部位ごとに、定量的に、かつ網羅的に調べる技術は存在せず、O型糖鎖が持つ生理機能はごく限られた断片的な知見しか得られていない。そこで本研究では、微量の生体試料中のO型糖鎖結合部位を網羅的に定量プロファイル解析する技術の開発を目指している。 平成29年度は、まずはモデル糖タンパク質を用いて新規O型糖タンパク質定量プロファイル法の核となるβ脱離反応、糖鎖付加部位のラベル化反応の条件決定を行い、本法用にLC-MS分析パラメータを至適化した。モデルタンパク質としてO型糖鎖修飾部位を複数持つことが知られているウシフェツインを用いた。O型糖鎖修飾ペプチドの濃縮を行い、LTQ-Orbitrap-Fusion Lumos質量分析計(Themo Scientific社)にて分析を行った。その後取得した質量分析データをExpressionistプロテオームデータベースサーバー(Genedata社)に転送し、必要なデータ処理後にO型糖鎖付加部位の同定を行った。その結果、これまでに報告のない新規付加部位18か所を含む、24か所のO型糖鎖付加部位が同定された。 さらに、HeLa細胞総抽出液を用いて、網羅的に生体試料中のO型糖鎖結合部位を同定する技術を確立することを試みた。現在数百か所のO型糖鎖付加部位が同定されており、さらなる高感度化を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウシフェツインを用いた実験において、非常に高い糖ペプチドの濃縮効率を達成した。トリプシン消化物をそのまま質量分析計で測定した場合、O型糖鎖修飾のある糖ペプチドは全ペプチドの0.4%しか存在が確認できなかった。しかし本法を用いることにより、サンプル中の含有率が76%まで上昇した。これにより、従来の報告の4倍もの新規なO型糖鎖付加部位を同定することに成功した。また、細胞総抽出液という複雑な試料からもO型糖鎖付加部位が多数同定できており、新規技術の確立に向けて順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
HeLa細胞総抽出液からも多数のO型糖鎖付加部位がすでに同定されているが、2000か所を目標として、さらなる条件の至適化を行う。さらに平成30年度は、開発した手法を用いて糖転移酵素GALNT6の膵癌細胞内における内在性基質を網羅的に同定し、最も高頻度にGALNT6から糖鎖修飾を受ける基質タンパク質について付加糖鎖構造の決定、癌細胞の増殖や運動能に対する機能解析を実施する。
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