2017 Fiscal Year Research-status Report
統計熱力学計算に基づくロドプシンの熱安定化アミノ酸置換体の創出
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17K15099
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
安田 賢司 千葉大学, 大学院理学研究院, 特任助教 (40792081)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 膜タンパク質 / ロドプシン / 熱安定化 / 溶媒和エントロピー / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
極めて高い熱安定性を有する膜タンパク質であるサーモフィリックロドプシンに関して、その安定性の物理起源を膜タンパク質用に開発した我々独自の自由エネルギー関数(FEF)を用いて詳細に解析した。FEFはタンパク質内の静電相互作用エネルギー及び、細胞膜を構成する炭化水素基を溶媒と見なしたときの溶媒の並進配置エントロピーに着目している点に特徴がある。以下の手順で研究を遂行した。 (1)エネルギー項の改良。いくつかの膜タンパク質に対してFEFのエネルギー項Λを計算し、それをCHARMM力場で計算される静電相互作用エネルギーEと比較することでΛの計算パラメータの改良を行った。 (2)TRの高い熱安定性の物理起源の解析。(1)で改良されたΛを組み込んだFEFを用いて、TRの熱安定性の物理起源をTRと非常によく似た立体構造とアミノ酸配列をもつキサントロドプシン(XR)と比較することで解析した。その結果以下のことが判明した。膜内領域のみでは、TRもXRもエントロピーの観点では安定性に違いはない。また、エネルギーの観点ではXRの方が安定である。従って、膜内領域を見る限り、TRよりむしろXRの方が安定である。一方で、TRは水中領域でエントロピーSの観点で有利な構造となっている。同時にエネルギーΛの観点でも安定である。すなわち、TRは水中領域での側鎖の密な充填に伴う大幅な溶媒のエントロピー利得と、効率的な分子内及び水-タンパク質間水素結合形成により非常に高い熱安定性を獲得していることが判明した。 本研究の成果は、他の多くの不安定な膜タンパク質の安定化への有力な指針を与えるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、我々の自由エネルギー関数を改良し、TRの非常に高い熱安定性の物理起源を明らかにすることができた。このため予定通り順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に従って、研究項目を継続する。我々がこれまで開発してき膜タンパク質の熱安定化変異体の理論的予測手法に、今年度得られたTRの熱安定性起源の知見を融合することにより、TRの熱安定化変異体の創出を行う。
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Causes of Carryover |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と支出額は僅かに異なった。研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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