2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of molecular dynamics simulation for hydronium ion in solution and the application to biomolecules
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17K15101
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 宙志 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (20767199)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 物理化学 / 分子シミュレーション / 量子化学 / 生物物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素イオンは、溶液中において溶媒である水との共有結合の生成・消滅を頻繁に引き起こしながら、玉突き(Grotthuss機構)により輸送されると考えられる。したがって、水素イオンをシミュレーションにおいて取り扱うためには、(1)共有結合の生成・消滅のダイナミクスを取り扱うことが可能、(2)溶媒の量子化学効果を取り込むことが可能な理論的枠組みが必要となる。後者の問題は近年、我々が開発したSCMP法により実現しされた。 そこで今年度は、残された課題であった共有結合の生成・消滅の取り扱いの実現に向けてSCMP法の改良を行った。具体的には、従来のSCMP法の場合、安定したシミュレーションを実行するには、利用できる分子モデルが低精度の半経験的量子化学モデルに限られていた。つまり高い精度が求められる共有結合の生成・消滅を取り扱うことはできなかった。そこでSCMP法の理論的枠組みの拡張(手法の一般化)を行いどのような分子(量子化学)モデルでも取り扱えるようにした。当結果は、現在論文執筆中である。 また、溶媒の量子化学効果を取り込みながら溶媒和構造・動的性質(赤外分光スペクトル、および拡散係数など)を算出する計算手法の枠組みを創出した。そして、水素イオンと同様に生体系に重要な役割を果たしている陽イオン(Na+,K+,Ca2+)に対して、同手法を実際に適用した。その結果、溶媒の量子化学効果が溶液中におけるこれら陽イオンの物理化学的性質に顕著に影響を及ぼしていることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論手法の拡張・一般化には当初の研究計画には無かった問題が見つかった。この問題は、ほとんど知られていないが同分野に共通した普遍的なものであることが分かった。この問題のために当初の予定していた計画よりも時間がかかったが、最終的には問題の原因と解決策を発見することができた。現在論文執筆中である。 また溶液系において量子化学効果を取り込んだ物理化学量の算出を実現し、様々な陽イオンに適用することに成功し、論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
当年度、一般化に成功した手法に対して更に修正を加え、水素イオンの取り扱いを可能にし、溶液中および生体分子における水素イオンのダイナミクスを明らかにする。
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Causes of Carryover |
テスト計算のための計算機サーバの購入を予定していたが、手法開発(プログラミング)用に用いていたコンピュータが壊れたために、急遽購入する計算機を変更したため。
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