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2017 Fiscal Year Research-status Report

走化性における応答濃度レンジ拡張メカニズムの解明

Research Project

Project/Area Number 17K15105
Research InstitutionOsaka University

Principal Investigator

宮永 之寛  大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (70569772)

Project Period (FY) 2017-04-01 – 2019-03-31
Keywords走化性 / 濃度レンジ / GPCR / Gタンパク質 / 1分子イメージング / 細胞内シグナル伝達 / 細胞性粘菌
Outline of Annual Research Achievements

本研究では,真核細胞の走化性にみられる広い濃度レンジで誘引物質の濃度勾配を検知する仕組みを調べるため以下の3つの項目について研究を行う。研究項目(1):誘引物質濃度の広いレンジにわたるGタンパク質動態の1分子解析。研究項目(2):超解像顕微鏡PALMによる受容体-Gタンパク質の1分子粒度局在計測。研究項目(3):Gタンパク質動態の数理モデル構築と計算機シミュレーション。本年度は当初の予定どおり研究項目(1)と(2)に取り組んだ。
研究項目(1)として三量体Gタンパク質の生きた細胞の膜上での動態を1分子解析したところ,一般的に考えられているGタンパク質共役受容体(GPCR)と三量体Gタンパク質の相互作用様式とは異なる複合体形成が明らかになった。一般的にGPCRは三量体Gタンパク質を相互作用を介して活性化し,GαとGβγのサブユニットに解離させると考えられている。今回の結果は,活性化し解離したGαがGPCRに再び結合することを示していた。さらに,このGPCRとGαの結合は本研究で解明すべき走化性レンジの拡張メカニズムに重要であることがわかった。GPCR-Gαは走化性誘引物質濃度に依存して結合していたが,この濃度依存性を操作すると,細胞の走化性レンジが同調して拡張されることを見出した。この結果は,今回新しく確認されたGPCR-Gαの相互作用が濃度レンジを拡張することを示唆している。これは走化性応答のみならず,GPCRを介したシグナル伝達全般において重要な発見である可能性がある。
研究項目(2)として,超解像顕微鏡PALMをもちいて走化性受容体の細胞膜上での分布を1分子粒度で測定した。受容体の分布は完全なランダムではなく,さらに,細胞の前後極性に従った局在の勾配がある様子が観察された。こちらの結果も従来の一般的な考えとは異なるものであり,モデルを考える上で重要な結果が得られた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

現在までに研究項目(1)として行った研究により,GPCRと活性化したGαの新たな複合体形成を発見した。これは,本研究の目的である走化性レンジの拡張メカニズムの解明につながる重要な現象である。研究開始までに明らかになっていた2つのメカニズム,三量体Gタンパク質の活性化と,我々が見つけたGタンパク質の制御分子であるGip1依存的な膜局在制御だけでは高濃度誘引物質での走化性を簡単には説明できなかった。そのため,モデル構築とシミュレーションを介してメカニズムに足りない因子を明らかにする必要性があった。しかし現在までの研究により,新たに発見したGPCR-Gα複合体が高濃度での走化性において重要なメカニズムそのものである可能性が示唆された。このことから本研究は当初の計画以上に,走化性における応答濃度レンジ拡張メカニズムの解明に向けて進展していると言える。

Strategy for Future Research Activity

今後は,当初の予定を変更しGPCR-Gα複合体の性質と走化性における機能を1分子解析で調べる研究を追加する。当初の計画では平成30年度は,研究項目(3):Gタンパク質動態の数理モデル構築と 計算機シミュレーションを行う予定になっている。これは,走化性の広い濃度レンジを説明する因子が足りていないために,モデル構築とシミュレーションを介してメカニズムに足りない部分を明らかにする必要性があったためである。しかしながら,現在までの研究によりGPCR-Gα複合体形成という,本研究の目的である「走化性における応答濃度レンジ拡張メカニズムの解明」に直接つながる発見があった。本研究を最も効率的に達成するためには,GPCR-Gα複合体形の解析に注力することが望ましい。そこで今後は,研究項目(1):誘引物質濃度の広いレンジにわたるGタンパク質動態の1分子解析,研究項目(2):超解像顕微鏡PALMによる受容体-Gタンパク質の1分子粒度局在計測,を継続しGPCR-Gα複合体形成の解析を行う。研究項目(1)では,Gタンパク質動態の1分子解析により,GPCR-Gα複合体の効果と,誘引物質濃度勾配中での形成を明らかにする。研究項目(2)では,GPCR-Gα複合体形成が受容体とGタンパク質の分布に与える影響を超解像顕微鏡PALMで調べる。

Causes of Carryover

研究実績の概要に記したとおり29年度の研究では当初予期していなかった発見があり,予算の使用計画を変更する必要が生じた。29年度は現在手元にある実験材料をもちいて,Gタンパク質動態の1分子解析を多様な解析方法でより深く理解する必要があったため,物品費での使用額が予定よりも低くなった。30年度は,前年度の予期せぬ発見の検証のため,当初の予定よりも多くの物品費がかかる見込みである。また,29年度の成果は論文掲載にまで至っておらず,学術誌投稿料として予定した費用を30年度に繰り越す必要がある。また,29年度の発見を国際的な学会で議論するための費用を30年度の旅費に計上する。
上記の理由により,30年度は,【物品費】として\1,881,273。【国内旅費】として\100,000。【外国旅費】として\200,000。【その他】(研究成果発表費用,学会参加費)として\800,000を使用する予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2018 2017

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 三量体Gタンパク質の局在制御を介した走化性レンジの拡張機構2018

    • Author(s)
      宮永之寛,上村陽一郎,上田昌宏
    • Journal Title

      生物物理

      Volume: 印刷中 Pages: 印刷中

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] 走化性濃度レンジを拡張する cAR1 と Gα2 の複合体形成2017

    • Author(s)
      宮永之寛,上村陽一郎,桑山秀一,上田昌宏
    • Organizer
      日本細胞性粘菌学会 第7回例会

URL: 

Published: 2018-12-17  

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