2020 Fiscal Year Research-status Report
がん遺伝子産物Rasの動的な構造特性を介した機能発現メカニズムの解明
Project/Area Number |
17K15106
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松本 篤幸 国立研究開発法人理化学研究所, 科技ハブ産連本部, 研究員 (00753906)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | Ras / state transition / がん変異体 / 分子動力学シミュレーション / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.2種類のH-Ras変異体(H-RasQ61H, H-RasQ61L)の不活性型State 1のX線結晶構造について、一部の原子モデルの修正を実施した。 2.修正後の原子モデルに基づき、GROMACS2016を用いて5つの初速度で200 nsecの分子動力学(MD)計算のやり直し行った(計1マイクロ秒)。Switch IIがディスオーダーしているQ61H変異体のSwitch II領域については、前年度実施したMD計算と同様に野生型並びにQ61Lの原子座標に基づいて2種類モデリングし、それぞれについて計算と解析を実施した。 3.修正後のMD計算結果で観察されるSwitch I領域及びSwitch II領域の構造的特徴について、前年度に実施したMD計算の結果と概ね一致することを確認した。具体的には両変異体におけるSwitch IのN末端領域の運動性の上昇、Q61H変異体に特徴的にみられるSwitch II領域の運動性の上昇、Q61L変異体のSwitch II領域がstate 2-likeな構造状態を取ることの3点である。一方、Q61H変異体のSwitch II領域の構造分布については初期構造依存性が比較的強く見られることが明らかになり、積極的な議論から除外することにした。 4.修正後のX線結晶構造並びにMD計算結果に基づいて論文を作成した。本論文について、2021年5月時点で学術雑誌に投稿中である 。 5.本研究課題と関連して実施したタンパク質の運動性解析に関わる論文を2報公開した(Matsumoto, S., et al., Biophysical Journal, 119(3), 628 - 637; Matsumoto, S., et al., Nature Machine Intelligence, 3(2), 153 - 160)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題で得られた成果に関して2020年度中の論文投稿を目指していたが、結晶構造の修正に加え、新型コロナウイルス蔓延の影響により研究計画全体を変更せざるを得なかったため、当初計画より少し進行が遅れていると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度に得られた成果に基づいた論文は既に完成済みであり、現時点で論文投稿中である。本年度は論文投稿作業に伴う実験・計算などのリバイス対応を行う。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:2020年度に予定していた論文投稿に関わる費用が圧縮されたため、次年度使用額が生じた。 使用計画:これまでの研究活動を通じて得られた成果を学術雑誌等を通じて社会に発信するための費用並びに論文作成に関わる通信費・交通費として使用する。
|