2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K15119
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
西 晶子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (50772422)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 一次繊毛 / 眼科疾患 / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
人を含む動物細胞の多くは細胞表面に一次繊毛と呼ばれる構造を持っている。一次繊毛は細胞内外のシグナルを感受するアンテナとして重要な役割を担っており、その形成異常や機能不全は眼科疾患、腎臓疾患、多指症、内臓逆位、男性不妊、認知障害などの重篤な疾患を引き起こす。特に、これらの機能不全が遺伝子変異に起因する場合、これらを「繊毛病」と総称する。したがって繊毛形成の詳細なメカニズムを分子レベルで明らかにし、治療法を提案することは生命科学における重要な研究課題の1つである。 私たちはProminin-1(Prom1; CD133)と呼ばれる5回膜貫通型の膜タンパク質が繊毛形成に重要な役割を果たすと考えている。長年Prom1は幹細胞マーカーとして使用されてきたが、Prom1遺伝子異常は遺伝性の眼科疾患を誘発することが報告されて以来、Prom1は重篤な眼科疾患の原因遺伝子の一つとしても認識されている。実際に作成したProm1欠損マウスには、眼科疾患以外にもProm1欠損マウスの表現型が繊毛病の病態に類似していた。一方で、Prom1タンパク質の機能はほとんど分かっていない。 本研究はProm1の機能を、主に培養細胞実験系を用いて解明しようというものである。これまでの解析からProm1は一次繊毛に局在し、Prom1機能欠損により一次繊毛の形成が不全になることが観察された。一方Prom1を細胞内で一過的に強制発現すると細胞形態が大きく変化し、遺伝子性眼科疾患患者由来のProm1変異体を同様に導入すると、この形態変化起こらないことがわかった。そこで、細胞形態変化を起こすために必要な領域を検討したところ、カルボキシル末端の一部が重要であることが明らかになった。さらに、Prom1の過剰発現により惹起されるシグナル経路を阻害剤投与により検討し、低分子Gタンパク質の活性化が重要であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの解析から、Prom1が一次繊毛の形成に必要であることがわかったが、一次繊毛以外の細胞膜にも局在が認められたために、一次繊毛における形成機構に関わる機能解析を示す結果が得られなかった。しかし、Prom1の一過的な過剰発現により細胞形態の変化を示すことを見出し、その表現系が網膜色素変性症を示す変異では生じないことから、Prom1の生理的な機能活性に膜形態維持があることが示唆された。また、この機能活性にProm1タンパク質のカルボキシル末端の一部が必要であることを明らかにし、アクチン重合経路の関与を示唆することができた。この結果は一次繊毛のみでなく、Prom1の機能解析を明らかにするという本研究目的の進捗に貢献するものである。以上の点から、研究は概ね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、示唆されたRhoキナーゼとの相互作用の変化や、Rhoシグナル経路の抑制によるProm1の局在や活性の影響を検証する。また、Prom1変異マウスが不妊傾向を示すことから変異マウス由来の細胞単離が予定通りに行えないため、CRISPR/Cas9を使用したProm1欠損細胞を樹立し、Prom1の欠損による影響を検証する。そしてProm1過剰発現または欠損時に働く下流因子が明らかになった場合、細胞形態変化におけるProm1の役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究の主目的が、Prom1の一次繊毛形成における役割であった一方、実際の実験からは細胞膜の形態の変化という予定外の表現型が得られてたため、その解析に多くの時間を費やし、細胞膜形態の観点からProm1の機能を明らかにしてきた。そこで、Prom1と一次繊毛形成の関係を明らかにするための実験にかかる諸費用(抗体、酵素、培養液、血清など)を次年度使用とすることにした。
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Research Products
(4 results)