2017 Fiscal Year Research-status Report
脳の細胞系譜からひも解く、発生過程でプログラムされた行動変化を生み出す神経回路
Project/Area Number |
17K15130
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
大沼 耕平 甲南大学, 理工学部, 研究員 (70774876)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ホヤ幼生 / 脳胞 / 細胞系譜 / Kaede |
Outline of Annual Research Achievements |
中枢神経系の細胞がたった数百しかないホヤ幼生は、行動を生み出す神経回路の形成と働きを、個々の細胞レベルで理解できる優れたモデルである。しかし、ホヤ研究の一般的な胚操作である卵膜除去が脳の発生を乱すため、幼生の脳にある細胞の数や種類は不明であり、神経回路の構成ですら未解明である。神経回路の構成を明らかにするために、平成29年度ではまず、開発した手法を駆使してその操作上の問題を解決し、正常な脳細胞の数とその種類を調べることにした。 正確に細胞の数を知るには、発生を追って細胞系譜を明らかにした上で、数えるのが確実で効率が良いと考えられる。カタユウレイボヤでは、神経板が形成された時期(神経板期)まで細胞系譜が解明されているため、神経板期以降の細胞系譜に注目した。光変換型蛍光タンパク質であるKaedeを用いた細胞標識法により、神経板にある予定脳胞細胞(16個)がそれぞれ幼生期に何個になるかを明らかにし、それを基に幼生の脳胞細胞数を調べた。また同時に免疫染色法により、脳胞にある4種類の神経細胞がそれぞれどの神経板の細胞から生じるかを調べた。以上の解析により、正常な脳胞細胞の数を明らかにすることができた。また、脳胞にある4種類の神経細胞のうち、3種類(グルタミン酸作動性ニューロン、GABA・グリシン作動性ニューロン、カテコールアミン作動性ニューロン)についてその細胞系譜を明らかにすることができた。残り1種類(コリン作動性ニューロン)の細胞系譜については次年度に調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果はほぼ予定通りに得られたが、当初の予定していた方法で得られたわけではないので、「おおむね順調」という状況を選んだ。 当初、神経板細胞をKaedeの光変換後の蛍光で標識したあと、タイムラプス観察によりその標識細胞の動態を調べることで、脳胞細胞の数を調べる予定であった。しかし、タイムラプス撮影中にホヤ胚が卵膜で回転するため、標識細胞を追跡するのが困難であった。そこで、タイムラプス撮影をやめて、単純に標識した神経板の細胞が幼生期に何個になるかを調べた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2017年度に解析できなかった、コリン作動性ニューロンの細胞系譜を明らかにする。次に、脳胞にある神経細胞の数・位置・細胞系譜の情報をもとに、ホヤ幼生の光・重力応答に必要な脳胞の細胞を特定する。また、それらの応答を生み出す神経回路を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していたタイムラプス解析やその解析で用いるDNAコンストラクトの作製、コリン作動性ニューロンの細胞系譜解析を行えなかったことから、次年度への繰り越しが生じた。 2018年度では、まず2017年度の続きの解析(コリン作動性ニューロンの細胞系譜解析)をするため、その解析に用いる物品(マイクロインジェクションに用いる機器類などやDNAコンストラクト作製試薬など)の購入に繰り越し分を使用する。
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Research Products
(5 results)