2017 Fiscal Year Research-status Report
病原菌感染に対する植物の防御システムの分子基盤の解明
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17K15141
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 直紀 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40553623)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 免疫 / 植物 / シロイヌナズナ / 病原菌 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の病原菌に対する応答機構の理解は、病原菌からの攻撃による植物の防御機構の解明に繋がるのみならず、耐病性作物の創出にも大きく貢献する。そのことから、植物の免疫機構を分子レベルで明らかにすることは重要な研究課題である。最近の我々の研究により、植物のDNA損傷応答の中心的役割を果たしているSOG1転写因子が、病原菌に対する防御応答においても重要な役割を果たしていることを見出している。本研究では、SOG1を中心とした病原菌感染の応答メカニズムを明らかにすることで、植物の防御応答機構の総合的理解を目指す。 現在までに、SOG1の機能欠損変異体では、アブラナ科炭疽病菌に対して高い罹病性を示すことを明らかにした。そして、マイクロアレイおよびChIP-seq解析によりSOG1の標的遺伝子を同定したところ、SOG1が複数の病原菌感染応答に関わる因子を直接転写誘導してることを見出した。さらに、SOG1タンパク質量が病原菌感染により変化するか調べたところ、病原菌感染前の成熟葉ではSOG1タンパク質がほとんど蓄積していないのに対し、感染後の病斑の周りで有意に蓄積してくることが示された。これらの結果から、SOG1は病原菌感染に応答して病斑の周りで蓄積し、植物体内で菌が増殖するのを防いでいる可能性が示唆された。さらに、SOG1タンパク質と直接結合するE3リガーゼを同定した。そのE3リガーゼは、病原菌感染により遺伝子発現が低下することを見出した。この結果から、このE3リガーゼが病原菌感染時のSOG1タンパク質の蓄積に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病原菌感染に対する防御応答に、SOG1が病斑の周りで部位特異的に働くことが重要であることを新たに見出したことから、おおむね順調に進展している。また、SOG1が病原菌感染応答関わる因子を直接制御していることから、SOG1の下流でどのようなシグナル伝達経路が働くことで病原菌に対する防御応答が引き起こされているのか、今後の展開が非常に興味深くなってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
病原菌感染後にSOG1タンパク質がどのようなメカニズムで蓄積しているのか明らかにする。特に、SOG1タンパク質と結合するE3リガーゼの機能解析を進めることで、SOG1タンパク質の制御機構を解明する。
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Causes of Carryover |
平成29年度に計画していた遺伝子発現解析を、平成30年度に行うことに変更したことにより次年度使用額が生じた。また、平成30年度分の助成金と合わせて、マイクロアレイ解析による網羅的な遺伝子発現解析を進める計画である。
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