2017 Fiscal Year Research-status Report
GAF1-GRASタンパク質複合体による転写抑制機構の解明
Project/Area Number |
17K15143
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 岳 広島大学, 理学研究科, 助教 (30636139)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 転写制御 / 植物ホルモン / ジベレリン / 転写抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジベレリン (GA) は種子発芽、茎部伸長、花芽形成などに関与する植物ホルモンである。GAの内生量はフィードバック制御により一定の範囲内に保たれている。DELLAはGAの信号伝達において負の制御因子として機能する。乾燥や塩、低温などのストレス条件下では、植物の成長は抑制される。このような状況では、DELLAタンパク質が蓄積するにも関わらず、GA生合成酵素遺伝子の発現の上昇は見られない。したがって、フィードバック制御を一時的に抑制することでGA生合成酵素遺伝子の発現を抑圧する上位の制御が存在すると推定されるが、詳しい分子機構は明らかになっていない。研究代表者らは、DELLAが転写因子GAF1のコアクチベーターとしてGA生合成酵素遺伝子の転写を活性化することを見出した。DELLAと同じGRASファミリーに属するタンパク質GRXがGAF1とDELLAによる転写活性化能をほぼ完全に抑圧したことから、フィードバックよりも上位の制御の存在が示唆された。本研究は、GRX自身が強い転写抑制能をもつのか、あるいはGRXがGAF1またはDELLAと強く結合することでGAF1とDELLAの結合を競合的に阻害しているのかを調べ、GRXがどのようにGAF1-DELLA複合体の転写活性化能を抑制するのかを解明することを目的とした。 平成29年度の研究実績として、GRXはカリフラワーモザイクウイルスCaMVの35Sプロモーターの転写活性を抑制したことから、GRXは転写抑制能をもつことが示唆された。続いて、GRXの転写抑制領域の同定を試みた。欠失変異導入を行った結果、GRXのN末端側とC末端側の両方に転写抑制能があることが示唆された。また、DELLAタンパク質の一つRGAとのドメインスワッピングを行ったが、いずれのキメラタンパク質においてもRGAの転写活性化能、およびGRXの転写抑制能が失われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の計画通り、1) 一過的発現系を用いたGRXの転写抑制能の解析、2) GRXの転写抑制領域の同定を行い、GRXが転写抑制能をもつことを明らかにした。当初、GRXに特徴的なアミノ酸配列が転写抑制能を示すと予想していたが、そのアミノ酸配列は転写抑制能には必要ないことが示された。GRXは、N末端非保存領域とC末端側のGRAS領域のそれぞれに抑制領域が存在することが明らかになり、現在その領域の同定を試みている。したがって、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究計画に沿って以下の実験を行う。1) GRXとDELLAのヘテロ二量体形成を調べる。二量体を形成した場合、GRXが相互作用することでDELLAが転写活性化能を失うかを調べる。2) GAF1とDELLA、GAF1とGRXはそれぞれ二量体を形成することから、これらの三者複合体形成を調べる。2) GRXがDELLAよりもGAF1と強く結合することで、DELLAとGAF1の結合が競合的に阻害されるのかを調べる。3) ストレス条件下におけるgrx変異体の発芽率を調べることで、GRXがGAF1-DELLAの活性を抑制する生理的な重要性を調べる。
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Causes of Carryover |
平成29年度の研究計画で記述したように、一過的発現系を用いたGRXの転写抑制能の解析を行ったが、これまで報告されていた一過的発現系のプロトコールを見直し、酵素や試薬の量をかなり削減することに成功した。したがって、次年度使用額が生じた。 平成30年度分として申請した助成金を使用し、当初の研究計画に沿ってGAF1-DELLA複合体の転写活性化能がGRXによってどのように抑制されるのかを解明する。平成30年度は、共免疫沈降法を用いて複合体形成を検証する研究計画であるが、平成29年度に生じた未使用額を用いて、今まで用いてきたビーズよりも非特異的なタンパク質の吸着が少ないビーズの比較検討を行うための費用に充てる。また、電気泳動は自作のゲルなどを用いて行う予定であったが、市販のゲルの購入に充てる。
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Research Products
(13 results)