2018 Fiscal Year Research-status Report
微小管局在型エフェクター、PH15を介した植物固有型RAB5の機能発現機構の解明
Project/Area Number |
17K15144
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
中村 瑛海 (伊藤瑛海) 国際基督教大学, 教養学部, 特任助教 (80726422)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物細胞生物学 / 膜交通 / Rab GTPase / エフェクター |
Outline of Annual Research Achievements |
生命の基本単位である細胞のなかは、生体膜によりオルガネラと呼ばれるコンパートメントに区画化されており、単膜系オルガネラ間では膜交通を介したタンパク質や脂質のやり取りが行われている。膜交通はRAB5 GTPaseをはじめとした因子群により厳密に制御される。RABは真核生物に広く保存されるが、陸上植物と一部の緑色藻類は保存型RAB5に加え、植物保存型RAB5を有するという特徴をもつ。植物RAB5の機能は、エフェクター(機能実行因子)を介して発現すると考えられるが、植物には他の真核生物におけるエフェクターのホモログのほとんど存在せず、植物固有型RAB5を介した膜交通の分子制御機構は未解明である。本研究は植物固有型RAB5のエフェクター候補として単離されたPH15の機能解析から、植物独自の膜交通制御機構の解明に取り組んだ。 緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合したPH15をPH15プロモーター下で発現する形質転換体を作出し、PH15の発現組織や細胞内局在を調べたところ、PH15は主根や側根の静止中心や、側根創始細胞と思われる細胞において、細胞膜や細胞内のドット状構造に局在することがわかった。PH15はホスフォイノシチドに結合性を示すとされるPHドメインを有しており、本研究から、PH15のPHドメインが後期エンドソームに蓄積することが知られるPI3,5P2に対して親和性を持つ可能性が示された。ph15 T-DNA変異体は目立った表現型が見られなかったが、液胞への膜交通制御を制御するSYP22の変異体との二重変異体を作出したところ、ph15変異がsyp22変異体の表現型を弱く抑圧することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ph15単独変異体は特に目立った表現型を示さなかったが、ph15変異はsyp22変異体の表現型を弱く抑圧することを示した。植物固有型rab5の変異は、syp22変異体の表現型を抑圧することが分かっており、PH15と植物固有型RAB5が同じ膜交通経路で働くことが示唆された。 植物固有型RAB5は全身的に発現するため、各組織における機能の別は不明であった。本研究でエフェクター候補であるPH15が組織特異的に発現することが明らかになったことから、植物RAB5が各組織において異なるエフェクターと相互作用することで、多様な機能を発現する可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、植物固有型RAB5が組織特異的に発現するエフェクターを介して、組織ごとに異なる機能を持つ可能性が示された。今後、PH15が発現する細胞における植物固有型RAB5の細胞内局在の調査や、PH15プロモーター制御下で植物固有型RAB5を発現する形質転換体を作出し過剰発現の影響を調べることで、植物の膜交通の細胞分化や形態形成における役割が明らかになると考えられる。
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Causes of Carryover |
平成30年度において、研究代表自身が医師指定の通院が必要となり、計画していた出張や実験が部分的に実施できなかったため、次年度使用額が生じた。
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