2017 Fiscal Year Research-status Report
視細胞に備わる高いS/N特性の基盤に関する数理生理学的研究
Project/Area Number |
17K15156
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
櫻井 啓輔 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20647317)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 視細胞 / シミュレーション / パッチクランプ / シグナル伝達 / マウス / 網膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊椎動物の網膜の桿体視細胞は、刺激入力に対する高いシグナル増幅効率と低いノイズレベル特性をあわせもつ。その細胞特性にたいして、視細胞の光受容体であるオプシンの性質がどう寄与するのかを解明するのが課題である。この目的のため、細胞特性に関与すると考えられるアミノ酸残基に変異を導入した赤錐体オプシンを、ロドプシンの代わりに視細胞に発現させ、光応答特性を電気生理学的に測定することを試みた。電気穿孔法によりマウス網膜組織にベクターを導入し、CRISPR/CAS9によるゲノム編集技術を利用して、桿体視細胞においてロドプシン遺伝子を赤錐体オプシン遺伝子に置換させた。ゲノム編集による遺伝子の置換は、マウスの網膜組織切片の免疫組織染色を用いて、桿体視細胞のロドプシンの代わりに赤錐体オプシンが発現していることを確認した。また、遺伝子が置換された細胞における電気的特性の測定は、網膜のスライスパッチクランプ法を適用した。マウスの急性スライス標本の作製と、パッチクランプ法による桿体視細胞からの電気生理学的測定系の確立を行った。 また、細胞の形態や機能性タンパク質の細胞における空間的局在化が、どのように細胞応答に寄与するのかを検証するために、視細胞の形態に基づいた3次元の数理モデルを構築しシミュレーションを行う課題に着手した。本年度は、マウス視細胞の形態に基づいて、40個の円盤膜で構成される視細胞外節の3次元モデルの構築を行った。この視細胞の3次元モデルに、光シグナル伝達に関連する酵素反応を配置させ、空間的要素を取り入れた3次元モデルにおいて、視物質の活性化を起点とした一連のシグナル伝達反応を経たシミュレーションを実行し、光応答を得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス網膜において生体内電気穿孔法による遺伝子の導入やスライスパッチクランプ法という電気生理学的測定系の確立については、当初の計画通りに進行している。また、視細胞の数理モデルの構築に関しては、3次元モデルの構築など当初計画した予定より早く進んでいる。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の計画については、ロドプシンが赤錐体オプシンに遺伝子置換されたマウス桿体視細胞の光応答特性をスライスパッチクランプ法を用いて測定を行う。マウスの網膜スライス標本において、遺伝子組換えのマーカーである蛍光タンパク質mCherry陽性の細胞から、パッチクランプ法で光応答およびノイズ解析を行う。 シミュレーション実験に関しては、視細胞の形態をもとにした3次元シミュレーションによる光応答の検証を継続する。また、桿体及び錐体視細胞の形態の違いに基づいた3次元モデルを構築し、これらの細胞の形態やシグナル伝達関連タンパク質の細胞内局在の違いがシグナル伝達の増幅率に及ぼす影響について検証を行う。
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Causes of Carryover |
電気生理学用マニピュレーターの納期が年度内に行われない可能性があった。実験計画の遂行には差し支えなかったため、次年度に繰り越すことにした。
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Research Products
(4 results)