2019 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms of maternal inheritance of developmental buffering
Project/Area Number |
17K15167
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
佐藤 敦子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (90589433)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発生のロバストネス / 発生緩衝 / カタユウレイボヤ / 母性効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の発生は、環境の影響やゲノムの変異の影響を緩衝し、一定に保たれている。このような作用を発生緩衝とよぶ。半世紀以上も前、Conrad Hal Waddington が提唱して以来、多くの理論研究が行われてきたが、実際の分子レベルの現象としての知見が乏しい。本研究では、シャペロン以外にも発生緩衝に関係している分子を探索するため、カタユウレイボヤのハイブリッドの比較研究を行った。 まず母親のタイプが異なるハイブリッド間での遺伝子発現を比較し、差のある遺伝子についてさらに遺伝子発現量と発生緩衝度合いとの相関関係について統計的に解析することにより、100を超える遺伝子が発生緩衝に関わることが示唆され、これらを発生緩衝分子と定義した。これらの遺伝子はシャペロンに限らず様々な機能にまたがっており、GO解析では、特に代謝経路や細胞内プロセスに関わる遺伝子が多く観察された。さらに、発生緩衝が母親による制御を受けるしくみを明らかにするため、得られた遺伝子発現データについてSNP解析を行い、母親由来の発現か父親由来の発現かを調べた。その結果、発生緩衝分子のうち、70近い遺伝子が母親由来もしくは父親由来の発現を示すことが明らかになった。さらにこのしくみを調べるため、タイプAとタイプBの卵の遺伝子発現解析を行い、データを比較した。その結果、母親由来の発現を示す遺伝子のうち、卵母細胞においてすでに遺伝子発現の差が見られる遺伝子が約半数であった。これらの結果から、発生緩衝分子のうち、多くは胚性発現での制御を受けていることが示唆された。また、小胞体関連シャペロンについては、線虫での機能スクリーニングを行い、ほとんどの小胞体関連シャペロンが発生緩衝にかかわることが示唆された。
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