2018 Fiscal Year Research-status Report
Nusuttodinium属渦鞭毛藻における共生藻との親密化機構の解明
Project/Area Number |
17K15168
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
大沼 亮 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 特別研究員(PD) (80756825)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 盗葉緑体 / 渦鞭毛藻 / クリプト藻 / 細胞内共生 / Nusuttodinium |
Outline of Annual Research Achievements |
葉緑体は、光合成生物が非光合成生物に取り込まれ、2つの細胞が統合されたことに由来するオルガネラである。しかし、宿主がどのように特定の共生藻と共生確立までの関係を築き、共生成立に至ったのかは未だ解明されていない。この問題を解明するため、クリプト藻を特異的に取り込んで盗葉緑体とする渦鞭毛藻類Nusuttodinium spp.を対象する。これまでの代表者の研究によって、Chroomonas sp. Dc01株を与えたN. aeruginosumでは、盗葉緑体の拡大、クリプト藻核の維持、宿主細胞との同調分裂が起こることを明らかにした。さらに、本種では与えるクリプト藻の種によって盗葉緑体の形状が異なることが示唆されている。本研 究では、異なる2種のクリプト藻を与えた時の詳細な形態観察と盗葉緑体現象の差異を生み出す遺伝基盤を明らかにすることで、特定の藻類と共生関係を親密化させる機構を解明することを目的とした。 平成30年度は、2種のChroomonas spp.を与えた時の共生状態の変化を形態的に観察し、比較を行った。Dc01株を与えた際には、渦鞭毛藻内に取り込まれたクリプト藻核が徐々に拡大していく一方で、HrL01株を与えた場合はクリプト藻核の拡大が起こらないことを見出した。 また、前年度のトランスクリプトーム解析を継続して行ったところ、宿主渦鞭毛藻のトランスクリプトームから、無機窒素同化に重要な幾つかの遺伝子が見出され、これらのタンパク質に対して抗体を作成し、局在解析を行った。さらに、窒素源を変動させた培養実験では、Dc01株を与えた場合、窒素源を添加していない培地で渦鞭毛藻が増殖しないのに対し、HrL01株を与えた場合は培地中に無機窒素を添加していなくても渦鞭毛藻が増殖することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宿主渦鞭毛藻とクリプト藻間の共生現象で重要だと思われる遺伝子を発見し、そのタンパク質の局在も明らかにできたため。さらに、種々の培養実験によって、HrL01株とDc01株の共生状態の違い、栄養塩利用の違いを明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで作成した抗体に加えて、特に重要そうなタンパク質に対しても新たに抗体を作成する。栄養塩を変動させた種々の培地を用いて、渦鞭毛藻+Dc01株の条件と渦鞭毛藻+HrL01株の条件で培養実験を行い、注目すべき遺伝子の発現量とそのタンパク質の発現量、局在を解析する。
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Causes of Carryover |
これまでの解析によって、宿主渦鞭毛藻から共生状態の維持に重要であると考えられる幾つかの遺伝子群が見つかった。本研究で扱う渦鞭毛藻は形質転換法が確立されていないため、これらのタンパク質の局在、発現解析には抗体の作成が必要である。本研究を遂行するためには数多くの抗体作製を要する上に、抗体の作成には数ヶ月かかるため、時間的な余裕を鑑みて次年度の始めに抗体を作成することに変更した。
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