2017 Fiscal Year Research-status Report
Resolving the paradox of nearly neutral theory from big genome data analysis
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17K15169
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
松本 知高 国立遺伝学研究所, 集団遺伝研究系, 助教 (00780321)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 祖先推定 / 集団内多型 / site frequency spectrum / ほぼ中立な進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
集団内の遺伝的多型およびその頻度分布を推定する理論的なメソッドを開発・発表した。集団内多型の頻度分布は突然変異にかかる弱い自然選択を検出するうえで有用であり、今回開発されたメソッドによってその推定が非常に高い精度でおこなえるようになったことは今後の集団遺伝学的研究分野に大きなインパクトを与えることになると期待している(Matsumoto and Akashi 2018)。 また、開発されたメソッドをキイロショウジョウバエ近縁種のゲノムデータに適用し、コドン使用頻度(Codon usage bias)にかかる弱い自然選択の検出をおこなった。結果として、近縁種間で自然選択のかかり方に違いがあり、一例としてキイロショウジョウバエでは現在Codon usage biasにほぼ自然選択がかかっていない状態であることが示唆された。またこれらの種で一般的な傾向として知られている塩基GCへの正の自然選択とは逆の方向への自然選択が現在働いている可能性も統計的に有意に検出された。これらの結果は非常に興味深く、多くの研究者の注目を集めるものになると期待している。 Concave fitness functionの検出を目指す研究に関しても、コンピューターシミュレーションを用いた解析から成果が得られた。Concave fitness functionの下で進化した集団は、各々の突然変異が独立に適応度に影響すると仮定したfitness functionの下で進化した集団に比べて集団間分化、集団内多型の度合いに違いが生じることが明らかになった。特に複数集団を用いた集団間分化の比較は、統計的な検定に利用可能であると考えられ、今後さらに研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究結果のうちの一つを論文という形で発表することができたのは大きな成果であると言える。論文で発表したメソッドは今後のデータ解析において重要な役割を持ち、将来的な研究の可能性が大きく広がった。一方でConcave fitness functionの検出については、異なるfitness functionによって進化した集団間の差異が申請者の予想よりもはるかに小さく、統計的に有意な差異の検出を可能にする検定方法を確立する点が難航した。そのため、様々な条件下でのコンピューターシミュレーション、またその結果の詳細な解析に多くの時間を割くこととなった。しかし、結果として複数集団を用いた集団間分化の比較という1つの可能性を発見できたことは大きな進展であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
Matsumoto and Akashi (2018)で発表したメソッドを用いてキイロショウジョウバエ近縁種でのCodon usage biasおよびイントロンの塩基組成にかかる弱い自然選択についてより詳細に解析をおこなっていく。Codon usage biasについてはコードされているアミノ酸ごとに分けて解析をおこなうことで、さらに深くそれにかかる自然選択の仕組みについて考察することが可能になると期待している。イントロンについては、特に先行研究からも示唆されている「転写開始点からの距離に応じた自然選択のかかり方の違い」に注目をして解析をしていきたい。 Concave fitness functionの検出を目指す研究については、「複数集団を用いた集団間分化の比較」がどの程度一般的に適用可能な検定方法なのかを、様々な進化の条件下でコンピューターシミュレーションをすることで明らかにする。その結果次第では、キイロショウジョウバエ近縁種や酵母のゲノムデータにこの検定を適用しConcave fitness functionの下での進化の傾向が検出されるかを調べていきたい。
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Causes of Carryover |
差額が小さく年度内に有効な使用法を見出せなかったため。 翌年度も計算機の購入を検討しており、また複数の学会に参加する可能性があるため、その費用として使用していきたい。
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