2017 Fiscal Year Research-status Report
寄生生物の絶滅危惧度を評価する:宿主の既存標本を活用した新規アプローチ
Project/Area Number |
17K15170
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川西 亮太 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特任助教 (50609279)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自然史標本 / 寄生虫 / ウオノエ科 / 宿主 / 魚類 / 絶滅危惧種 / 博物館 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、魚類寄生性のウオノエ科等脚類をモデルとし、博物館等に収蔵されている宿主(魚類)の既存標本を調査することで過去から現在までの寄生の有無や分布、寄生率などの変化を明らかにし、寄生生物の絶滅危惧度を評価することを目的としている。 2017年度は、琵琶湖から報告されているウオノエ科等脚類(Ichthyoxenos属)の宿主特異性を明らかにすることを主な目的とし、各種調査を行った。まず、種記載論文などの文献調査を行い、これまでに世界でIchthyoxenos属等脚類の寄生が報告されている魚種の整理を行った。その結果、世界の本属等脚類のうち、アジアに分布する淡水種はコイ目、中でもコイ科魚類から寄生が報告されている種が大多数であることが明らかとなった。 そこで自然史標本調査では、国立科学博物館等に収蔵されている琵琶湖産魚類標本のうち、コイ科を中心に37魚種への寄生の有無を調査した。合計で288ロット、2,951尾の魚類標本を調査し、10尾で寄生を確認した。いくつかの魚種では調査標本数が十分とは言えないものの、過去の文献情報なども併せ、琵琶湖産の本属等脚類の宿主をおおむね7魚種に絞ることができた。次年度以降は、全国の博物館・大学などが所蔵するこれらの魚種の標本を中心に調査し、過去から現在までの寄生率や分布域の変化を明らかにしていく予定である。 本研究の取り組みや得られた成果は、日本寄生虫学会サテライトミーティング(寄生虫生態学・疫学談話会)や日本生態学会などで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度に予定していた宿主魚種の絞り込みについては、全体としては3000個体近くの魚類を調査したことで見通しが立ったものの、魚種ごとに見ると調査個体数や採集年代の偏りといった、今後の解析を進める上で検討の余地があるものも残っている。これについては次年度に予定している本調査と並行して補完調査を行うことで対応可能と考えられるため、「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、宿主と特定された魚種に調査対象を絞りつつ、全国の博物館等の収蔵魚類標本への寄生調査を継続する。特に、各魚種の採集年代を過去から現在まで網羅することで、寄生率や分布域などの経年変化を明らかにしていく。できれば、研究対象地域である琵琶湖での現地採集調査等により、最も新しい年代のデータも得たい。また、これと並行して、前述の潜在的宿主の補完標本調査も行い、宿主特異性に関する結果を補強する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国際学会参加を1件取りやめたことが主な理由である。物品費が当初の見込みを若干上回ったりしたものの、最終的には未使用額が残ることとなった。 次年度の旅費および調査用消耗品の購入費用に充てる。
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Research Products
(2 results)