2018 Fiscal Year Research-status Report
寄生生物の絶滅危惧度を評価する:宿主の既存標本を活用した新規アプローチ
Project/Area Number |
17K15170
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川西 亮太 北海道大学, 地球環境科学研究院, 特任助教 (50609279)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 自然史標本 / 寄生虫 / ウオノエ科 / 宿主 / 魚類 / 絶滅危惧種 / 博物館 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、琵琶湖に生息する魚類寄生性のウオノエ科等脚類(Ichthyoxenos属)をモデルとして、博物館などに収蔵されている宿主(魚類)の既存自然史標本を調査することで、過去から現在までのウオノエ科等脚類の寄生の有無や分布、寄生率などの変化を明らかにし、寄生生物の絶滅危惧度を評価することを目的としている。 2018年度は、前年度までに絞り込んだ琵琶湖産の宿主魚種を主な対象として、日本各地の博物館や大学(国立科学博物館、大阪市立自然史博物館、滋賀県立琵琶湖博物館、京都大学総合博物館、北海道大学総合博物館など)での自然史標本調査を行った。50魚種、7,000個体を超える魚類自然史標本へのウオノエ科等脚類の寄生を調べた結果、4魚種でウオノエ科等脚類の寄生が認められた。これら寄生が確認された魚種ごとに寄生率の時系列変化を見ると、1950年代以前の時代においては数~十数%ほどあった寄生率がどの宿主種においても1960年代後半ごろから0%となり、その後は寄生個体が見つからなかった。これらの結果は、琵琶湖沿岸域の開発が進み、環境悪化やそれに伴う琵琶湖の魚類の生息量減少が深刻になり始めた時代と合致していると考えられた。本研究は琵琶湖のウオノエ科等脚類がすでに人知れず絶滅した可能性を示唆しており、ひきつづき、近年採集された魚類自然史標本の調査や野外調査などを進めることでより詳細に絶滅危惧度について検討していく必要があると考えられる。 これら本研究の取り組みや得られた成果は、日本生態学会や日本魚類学会などで発表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、前年度に絞り込んだ宿主魚種を中心に標本調査を進め、調査した魚類個体数は7,000個体を越えた。魚種ごとの調査個体数や採集年代の偏りも補完するように調査を進めることができたことからおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき各地の博物館等に保存されている魚類標本の調査を進めると共に、絶滅危惧度を評価するための方法について検討する。
|
Research Products
(3 results)