2019 Fiscal Year Annual Research Report
Floral scent mediating cospeciation in plant-pollinator mutualism
Project/Area Number |
17K15172
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
岡本 朋子 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50588150)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 共種分化 / 花の匂い / 送粉 / 相利共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2 種以上の生物が密接に関わり合う寄生・共生系の一部では、共種分化してきたことが知られている。しかしながらこのような共種分化をもたらす生殖隔離機構 がどのようにして成立するのかについて明らかにした例は少なく、とりわけ植物と送粉者のような生活史の一部のみ相互作用を行う共生関係では皆無である。共種分化機構の解明は、生物多様性創出と維持機構を理解する点において、進化生態学における最も重要な課題の1つである。種特異的な共生関係を結ぶカンコノキ類とハナホソガ類を用いて、共種分化の機構を明らかにすることを目的として研究を行った。まず、送粉者の誘引に不可欠である花由来の揮発性化合物(花の匂い)に注目し、花の匂いの集団毎のち外が、植物と送粉者両者の生殖隔離を引き起こし、共種分化をもたらしたと仮説をたて、検証を試みた。その結果、花の匂いには地理的変異があること、その地理的な変異は主に九州以北と以南が境界であること、送粉者の揮発性化合物受容能力は両集団では違いがないことが明らかになった。ただし、受容能(化合物受容時の触角の電位応答)に差はなかったが、実際にそれぞれの集団の花の匂いに対する行動が異なるかどうかは明らかにできなかった。花の匂いは、集団間で、放出する化合物には差がなかったが、放出時のブレンドが大きく異ることが明らかとなった。特に、雌花ではその差が大きく、雄花では全体の集団を通じて匂いの組成に差がみられなかった。集団間の遺伝的分化の違いについては、現在データを解析中であるが、匂いが異なる集団間である程度分化する傾向が見られた。集団ごとの花の匂いの違いと遺伝的な分化パターンが一致していることから、匂いの変異が共種分化の鍵となった可能性があると考えられる。今後は、送粉者の行動実験を行い、それぞれの集団の花の匂いに対する送粉者の応答および行動を詳細に調べていく必要がある。
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